防衛医大が人工赤血球で大量出血したウサギを救命成功!
防衛医大が人工赤血球で大量出血したウサギを救命成功! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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「人工赤血球」で大量出血したウサギの救命に成功!

2022.01.18 Tuesday

人工赤血球が救命医療に革命を起こすかもしれません。

日本の防衛医科大学の研究によれば、大量出血状態にあるウサギに対して人工赤血球を投与した結果、本物の輸血に近い生存率が得られたとのこと。

人工赤血球は、細胞膜を模した小胞にヘモグロビンを結合させたもので、本物の赤血球と同程度の酸素運搬能力を持ちます。

研究はウサギの出産時の大量出血への対応を想定したものとなっていますが、戦場など輸血液が満足に得られない状況で、兵士たちを救う手段にもなると考えられます。

研究の詳細は、昨年11月16日付で科学雑誌『Scientific Reports』にて公開されました。

大量出血に対する人工赤血球を用いた救命蘇生に向けての基盤技術の開発 https://www.ndmc.ac.jp/wp-content/uploads/2022/01/2022_01_meneki_press.pdf
Resuscitative efficacy of hemoglobin vesicles for severe postpartum hemorrhage in pregnant rabbits https://www.nature.com/articles/s41598-021-01835-w

大量出血したウサギを「人工赤血球」で救う!

防衛医大が人工赤血球で大量出血したウサギを救命成功!
防衛医大が人工赤血球で大量出血したウサギを救命成功! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

大量出血を起こしている患者は迅速な輸血が生死を分けます。

しかし災害時や戦時など、医療体制がひっ迫した状況では輸血液の確保が困難です。

それ以外にも、出産時の大量出血は現在も妊婦の死因の第1位となっています。

日本の産婦人科の多くは小規模であり、全体の8割において輸血の事前準備ができていません。

そのため突発的な大量出血に対する迅速な対処が遅れてしまい、妊婦さんが大きな病院に運ばれる前に出血死してしまう事例が現在でも続いています。

さらに近年では新型コロナウイルスの流行により、利用可能な血液が世界的にも不足しています。

そのため、代用血液の開発が急がれていました。

代用血液として最有力と考えられているのが「人工赤血球(HbV)」です。

人工赤血球は、酸素運搬能力を持ったヘモグロビンを細胞膜を模した小胞(リポソーム)に結合させたもので、本物の赤血球に近い酸素運搬能力を発揮します。

また、人工赤血球は血液型に関係なく使用できるため、一刻を争う場合にも迅速な処置が可能です。

しかし、出産時に起こる大量出血において、人工赤血球がどの程度の効果を発揮するかは、まだ確かめられていませんでした。

そこで今回、防衛医科大学の研究チームは、人間の出産時の大量出血を模倣するため、出産直後の母親ウサギの子宮動脈を切断。

意図的に大量出血させて、人工赤血球を投与するテストを実施しました。

その結果、酸素運搬能力のない代用血漿のみを与えられた母親ウサギは全滅したのに対し、人工赤血球を与えられた母親ウサギは10羽中8羽が6時間後にも生存していたのです。

なお、比較のために本物の血液を輸血された母親ウサギは、8羽中全羽が6時間後にも生存していました。

この結果は、人工赤血球が失われた血液の代りにウサギに酸素を供給し、本物の血を輸血したのに近い効果を持つことを示します。

次ページ2年の常温保存が可能 災害や戦時の緊急輸血にも役立つ

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