- アンボイナガイは特殊なインスリンを毒として使用する
- 毒インスリンは即効性があり極めて強力
- 毒インスリンの持つ即効性を取り入れたハイブリッドインスリンは人間にも優れた効果を発揮する
アンボイナガイ(イモガイ科)は、狩りで強力な毒を使う「海の殺し屋」として知られています。
アンボイナガイの分泌する毒の正体は強力なインスリンであり、その毒インスリンに触れた小魚は低血糖のショックを起こして気絶してしまうのです。
そして気絶した小魚は、アンボイナガイによってゆっくりと丸呑みにされます。
2015年にこの毒インスリンの存在が発見されてから、研究者たちは、この強力な毒インスリンを人間の糖尿病治療に役立てないか考えてきました。
そして今回の研究によって、毒インスリンと人間のインスリンを合成したハイブリッドインスリンが作成され、ついにその目的を達成。この新しいインスリンは、毒のもつ即効性と人間に対する高い親和性を併せ持ち、優れた血糖低下作用を示したとのこと。
しかしハイブリッドといっても、合成の方法は様々です。
研究者たちはどのような方法で毒を薬に変えたのでしょうか?
インスリンが毒になる仕組み
人間の体の中で働くインスリンは通常、凝集された状態ですい臓に保管されています。
そして血糖値の上昇を確認すると、凝集体から一つ一つ、インスリンが離れていき、血糖値を下げていきます。
しかしこの凝集状態からの分離プロセスには1時間ほどの時間がかかることが知られており、食後の急速な血糖上昇にしばしば対応できません。
一方、小魚狩りに使われる毒インスリンは、通常のインスリンに比べて非常に小さな構造をしていることが知られており、凝集体を作らず、小魚のエラから侵入すると即座に低血糖を誘発させます。
この強力な即効性のお陰で、インスリンは毒として機能することができるのです。