翼のようなヒレをもつサメ(復元イメージ)
翼のようなヒレをもつサメ(復元イメージ) / Credit: Oscar Sanisidro
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9300万年前の「翼の生えた新種ザメ」を発見! サメとエイの「キメラ」だった可能性も

2021.03.19 Friday

恐竜がまだ地球を歩き回っていた頃、メキシコの海では、翼のようなヒレをもったサメが泳いでいたようです。

フランス国立科学研究センター(CNRS)は昨日、メキシコで約10年前に見つかった化石から新種のサメを特定したことを発表。

生息年代は約9300万年前で、今日のエイやマンタに似ていますが、同属ではなく、別グループに属しているようです。

学名は、化石を展示予定のメキシコ・ミラルカ博物館にちなんで、「Aquilolamna milarcae、ミラルカのワシザメ」(以下、ミラルカ)と命名されました。

研究は、3月18日付けで『Science』に掲載されています。

‘Winged’ eagle shark soared through oceans 93 million years ago https://www.livescience.com/ancient-shark-flew-through-dinosaur-age-seas.html
Manta-like planktivorous sharks in Late Cretaceous oceans https://science.sciencemag.org/content/371/6535/1253

サメとエイの「キメラ」だった⁈

化石は2012年に、メキシコ北東部のヌエボ・レオン州の石切り場にて発見されたものです。

ミラルカが生きていた頃、当地一帯は西部内陸海路( Western Interior Seaway)」という巨大な内海に覆われていました。

西部内陸海路は、白亜紀(1億4500万〜6600万年前)の中期〜後期まで存在し、今日の北アメリカ大陸を東西に分断していたとされます。

北は北極海、南はメキシコ湾まで広がり、長さ3200キロ、幅970キロに達していました。

西部内陸海路
西部内陸海路 / Credit: ja.wikipedia

そんな内海を泳いでいたミラルカは、今日生きているどのサメとも違っています。

最大の特徴はやはり、翼のように左右に伸びた胸ビレで、翼幅1.9メートル、全長1.65メートルに達します。

もう一つの興味深い特徴は、頭部が短く、鼻が不明瞭で、口が極端に大きく幅広であることです。

また、歯が保存されていなかったことも含め、プランクトンのような微小生物を濾し取るフィルターをもっていたと見られます。

研究主任のロマン・ブロ氏は「胴体や尾ビレは現代のサメに似ていますが、頭部や胸ビレはエイやマンタに近いです。

これがミラルカに両者の融合したキメラ的外観を与えている」と説明します。

発見されたミラルカの化石
発見されたミラルカの化石 / Credit: Wolfgang Stinnesbeck

サメやエイのような軟骨魚類(骨格全体が軟骨でできている)は、約3億8000万年前に出現した板鰓(ばんさい)類というグループの一部です。

プランクトン食の板鰓類には、ジンベエザメのような典型的なサメ型と、エイやマンタのような平板型の2タイプがあります。

しかし、ミラルカはどちらの特徴も備えており、いずれにも分類できません。

ブロ氏は「ミラルカはエイの祖先や先駆種ではなく、むしろ異なるグループが独立に同じ特徴を進化させた収束進化(convergent evolution)の一例である」と指摘します。

それから、ミラルカには他のサメにある背ビレや腹ビレが見られません。

このことから、ホオジロザメのようなスピードやどう猛性はなく、穏やかなスロースイマーだったと考えられます。

しかし、サメと同じ尾ビレがあるので、エイやマンタよりは俊敏に移動できたのかもしれません。

泳ぎは遅かった?
泳ぎは遅かった? / Credit: Oscar Sanisidro

以上からミラルカは、過去に例のない姿をしていたようですが、他方で「歯や背ビレ、腹ビレは単に化石として保存されなかっただけでは?」との声もあり、断定はできません。

絶滅時期についても不明ですが、ブロ氏は「陸上の恐竜と同じく、約6600万年前の隕石衝突に大打撃を受けたのではないか」と推測します。

隕石により海洋が極端に酸性化した結果、プランクトンが石灰化して、ミラルカのエサがなくなったという説です。

いずれにせよ、ミラルカの正体をあばくには、より多くの化石標本が必要でしょう。

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