おうし座にあるヒアデス星団のコア。星団のメンバーとなる星をピンク色で示している。
おうし座にあるヒアデス星団のコア。星団のメンバーとなる星をピンク色で示している。 / Credit:ESA/Gaia/DPAC, CC BY-SA 3.0 IGO; acknowledgement: S. Jordan/T. Sagrista.
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太陽系からもっとも近いヒアデス星団が、見えない「何か」に破壊されていた

2021.04.02 Friday

2021.03.28 Sunday

ヒアデス星団はおうし座の頭を形成している太陽系からもっとも近い星団です。

そのヒアデス星団に、最新の観測から奇妙な痕跡が見つかりました。

3月24日に科学雑誌『Astronomy&Astrophysics』で発表された新しい研究は、ESAのガイア計画による観測データを検証した結果、ヒアデス星団は太陽質量の1000万倍に及ぶ何らかの巨大な塊との接触で破壊されているようだ、と報告しています。

しかし、その巨大な重力源となるような天体は、周囲にまったく見当たらないのです。

ヒアデス星団は、ダークマターの塊によって破壊された可能性があると、研究チームは述べています。

Is the nearest star cluster to the Sun being destroyed?(ESA) https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Gaia/Is_the_nearest_star_cluster_to_the_Sun_being_destroyed
The 800 pc long tidal tails of the Hyades star cluster https://www.aanda.org/articles/aa/full_html/2021/03/aa39949-20/aa39949-20.html

太陽系からもっとも近いヒアデス星団

星団とは、星の密集した塊のことを指し、天の川銀河の周辺に数多く確認されています。

この中でも、太陽系にもっとも近いのがヒアデス星団で、我々からは約153光年離れた位置にあります

この星団のもっとも明るい星たちは、ちょうどV字型を描くように地球からは見えていて、それはちょうどおうし座の頭の部分を形成しています。

おうし座の頭を形成するヒアデス星団。もっとも明るいαで示される星はアルデバランで、星団のメンバーではありません。
おうし座の頭を形成するヒアデス星団。もっとも明るいαで示される星はアルデバランで、星団のメンバーではありません。 / Credit:株式会社アストロアーツのステラナビゲータ,国立天文台岡山天体物理観測所

このようにヒアデス星団の明るい星は、地球からも肉眼で確認できますが、それは星団のごく一部でしかありません。

実際そこには100個以上の暗い星が、60光年におよぶ球形のコアを作っています。

こうした星団は、内部の星同士の重力相互作用と天の川銀河の潮汐力によって、長い時間の中で引き伸ばされていると予想されています。

重力は空間に均一に掛かる力ではありません。重力源に近い方は強く引かれ、離れている方は弱く引かれます。

このため、物体は重力源に対して前後の方向には引き伸ばされるように力が加えられ、左右の方向からは押しつぶされるように力が加えられます。

こうした力の掛かり方を潮汐力と呼びます。

ヒアデス星団の星たちも、一方が星団の後ろ側へと送り出され、もう一方は銀河側へと引っ張り出されるような形になっていて、これを星団の潮汐尾と呼びます。

ただ、星団の中心から離れるほど星をグループ化することは難しくなります。

これまでの観測では、星団の動きと厳密に一致する星しか追うことができなかったため、6億年以上前に引き離された星は確認することができず、実際ヒアデス星団の潮汐尾を観測で検出することはできませんでした。

しかし、現在進行しているESA(欧州宇宙機関)のガイア計画では、天の川銀河の星の位置と速度を非常に正確にマッピングしているため、これを元にしてヒアデス星団の星の動きを何億年にも渡ってモデル化することに成功したのです。

そして、今まで未知となっていたヒアデス星団の潮汐尾を明らかにすることできました。

それによると、中央のコア部分は60光年ほどのサイズでしたが、星団の潮汐尾は数千光年にも及んでいるとわかったのです。

確認されたヒアデス星団の潮汐尾。星団のメンバーはピンクでマークされている。中心部分は60光年だが、潮汐尾は数千光年にわたって広がっていた。
確認されたヒアデス星団の潮汐尾。星団のメンバーはピンクでマークされている。中心部分は60光年だが、潮汐尾は数千光年にわたって広がっていた。 / Credit:ESA/Gaia/DPAC, CC BY-SA 3.0 IGO; acknowledgement: S. Jordan/T. Sagrista

これが今回の研究の1つの成果なのですが、話はこれだけで終わりませんでした

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