分子雲から星形成が行われるイメージ画像。
分子雲から星形成が行われるイメージ画像。 / Credit:NRAO
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天の川の中心部で「新しい星の卵」が次々と産声をあげている

2021.04.03 Saturday

誕生して間もない若い銀河は、新しい星を活発に生み出していますが、天の川銀河のような落ち着いた銀河ではもうほとんど新しい星は生まれていません。

天の川銀河の中心には、星の材料となる分子雲の集まりがありますが、ここは超大質量ブラックホールによる重力や磁場の影響によってかなり不安定な状態となっており、新たに星が誕生しにくい環境だと考えられていました。

しかし、日本の国立天文台の研究チームは、アルマ望遠鏡の観測から、天の川銀河の中心部に隠れた赤ちゃん星を多数発見し、この領域で星形成活動が続いていることを発見したと報告しています。

この研究は、3月16日に科学雑誌『The Astrophysical Journal』に掲載されています。

天の川銀河の中心部に「赤ちゃん星の巣」を発見(ALMA) https://alma-telescope.jp/news/press/cmz-202103?doing_wp_cron=1617261048.3671910762786865234375
ALMA Observations of Massive Clouds in the Central Molecular Zone: Ubiquitous Protostellar Outflows https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/abde3c

天の川銀河の中心は不毛地帯?

天の川銀河中心のガス雲。
天の川銀河中心のガス雲。 / Credit:ESA / NASA / JPL-Caltech / Hi-GAL

天の川銀河の中心部、超大質量ブラックホール「いて座A*」から1000光年の範囲には、「銀河中心分子雲帯(central molecular zone:CMZ)」と呼ばれるガス雲の領域があります。

塵やガスの濃密な雲は、重力で集まっていき、そこから新しい星を誕生させていると考えられています。

しかし、それは宇宙の天気が非常に晴れやかな場合に限ります。

天の川銀河のCMZは、「いて座A*」の影響による潮汐力でガスが激しい乱流状態となっており、また強い磁場の影響もあるため、ガスが重力で集まりにくくなっていると考えられていました。

例外的に活発な星形成を起こしている「いて座B2」という領域もCMZには存在していますが、基本的にここは大量のガスがあるものの、星形成には向かない不毛地帯だと理解されていたのです。

国立天文台のシン・ルー特任研究員らの研究チームは、そんなCMZの抑制された星形成活動の実体を探るために、アルマ望遠鏡を使った観測を行っていました。

しかし、この観測からは、予想に反して800を超える高密度のガス塊が発見されたのです。

高密度のガス塊は「星の卵」に相当するものです。

そこで研究チームは、この星の卵が羽化する可能性があるのかどうかを探ることにしました。

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