慢性社会的敗北ストレス状態にしたマウスの腸内環境が乱れる仕組みを解明!
慢性社会的敗北ストレス状態にしたマウスの腸内環境が乱れる仕組みを解明! / Credit:腸内細菌学雑誌
biology

「社会的敗北ストレス」が腸内環境を乱すメカニズムが明らかに

2021.05.17 Monday

2021.05.15 Saturday

心とお腹の関係が解き明かされました。

5月10日に『Scientific Reports』に掲載された論文によれば、強制的にうつ状態にさせたマウスの腸内では特殊な抗菌物質(αディフェンシン)の分泌が少なくなっていたとのこと。

抗菌物質の一種であるαディフェンシンが減少したマウスの腸では腸内環境が悪化し、毒素が蓄積して「お腹のトラブル」につながっていたのです。

脳と腸内環境については様々な研究がなされていますが、明確な原因物質が判明した例は珍しく、非常に画期的な成果です。

心理的ストレスが腸内細菌を攪乱する機序をはじめて解明~うつ病の脳腸相関を介した予防・治療法開発に期待~ https://www.hokudai.ac.jp/news/2021/05/post-837.html
Decrease of α-defensin impairs intestinal metabolite homeostasis via dysbiosis in mouse chronic social defeat stress model https://www.nature.com/articles/s41598-021-89308-y

慢性社会的敗北ストレス状態にしたマウスの腸内環境が乱れる仕組みを解明!

慢性社会的敗北ストレスになったマウスは人間のうつ状態と同じ様子をみせる
慢性社会的敗北ストレスになったマウスは人間のうつ状態と同じ様子をみせる / Credit:腸内細菌学雑誌

近年の急速な微生物学と神経科学の進歩により、と腸が非常に密接に関係していることが明らかになってきました。

精神的な異常は腸内環境を乱し、腸内環境の乱れは精神的な不調を引き起こします。

しかし数多くの研究にもかかわらず、精神状態が腸内環境に影響を与える仕組みは不明でした。

そこで今回、研究者たちは強制的にうつ状態にした「慢性社会的敗北ストレスマウス」の腸内分泌物を調べ、健康なマウスとの違いを比較しました。

慢性社会的敗北ストレスはマウスの縄張り意識を利用して作られる状態です。

強いマウスの縄張りに弱いマウスを入れ、1日5分の直接的攻撃、穴の開いたアクリル板ごしの24時間の精神的攻撃の組み合わせを10日間に渡って繰り返すことで作られます。

今回の研究では攻撃されるマウスの負傷可能性を減らすために、直接的攻撃を初日の5分を上限とし、徐々に時間を減らして繰り返しました。

慢性の社会的な敗北状態に陥ったマウスは人間の「うつ」に似た状態に陥り、引きこもりや快感喪失(楽しいと思えなくなる)などを引き起こすほか、好物である砂糖水への興味を消失するなど、大きな肉体的・精神的変質を引き起こします。

マウスが社会的敗北ストレス状態に陥ったことを確認すると、次に研究者たちはマウスの腸内分泌物を調べました。

結果、αディフェンシンと呼ばれる、一種の抗菌ペプチドの分泌量が大きく減少していることが判明します。

次ページαディフェンシンが減ると何が起こるか?

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