ラッパのマークの正露丸として知られる木クレオソートを主成分とする胃腸薬
ラッパのマークの正露丸として知られる木クレオソートを主成分とする胃腸薬 / Credit:大幸薬品
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正露丸で実際「寄生虫アニサキス」が死んでいることを世界で初めて確認! 特効薬となるか!? (2/2)

2022.06.10 Friday

2021.09.08 Wednesday

前ページ刺し身好きにとって恐怖の寄生虫アニサキス

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正露丸はアニサキスを確かに殺している

これまでの研究では、アニサキスが薬剤処理で動きを停止した場合、1~2日経っても再度動かなければ「死んだ」という曖昧な判定をしていました。

しかし、これでは科学的な証拠とは言いづらいものがあります。

そこで、今回の研究者たは、死んだ組織に反応して青色に染まるというトリパンブルー染色液を使ってアニサキスの生死判定を行う実験をしたのです。

研究では通常服用量の正露丸を溶かした液にアニサキスを30分浸し、活動の停止を確認してからトリパンブルー染色を行いました。

するとアニサキスは濃い青色に染まったのです。

トリパンブルー染色の様子。(A)正露丸処理なしの生きている線虫。(B)正露丸処理の1日後の不動線虫(1錠/ 10mL)
トリパンブルー染色の様子。(A)正露丸処理なしの生きている線虫。(B)正露丸処理の1日後の不動線虫(1錠/ 10mL) / Credit:K. Matsuoka et al.,Open J. Pharmacol. Pharmacothr(2021)

これはすなわち、正露丸によってほとんどのアニサキスが死ぬことを示しています

また、生きたアニサキスは胃液の消化酵素に分解されることがないため、体に入ると1週間近く生存し続けます。

しかし、正露丸液に30分浸したアニサキスは、胃液と同じ濃度の消化酵素(ペプシン)に浸した際、24時間以内に分解が始まったのです。

ペプシンに24時間浸した様子。(A)正露丸処理なしの生きている線虫。(B)30分の正露丸処理直後の不動線虫(1錠/ 10mL)。
ペプシンに24時間浸した様子。(A)正露丸処理なしの生きている線虫。(B)30分の正露丸処理直後の不動線虫(1錠/ 10mL)。 / Credit:K. Matsuoka et al.,Open J. Pharmacol. Pharmacothr(2021)

下の動画は研究者がYou Tubeに投稿した、アニサキスが正露丸と胃の消化液で分解される様子です。

これらの試験管実験(in vitro研究)の結果からは、アニサキスの幼虫が、広く入手可能な胃腸薬である「正露丸」の通常用量を経口摂取するだけで、殺すことができる可能性を示しています

研究者はこの正露丸のアニサキス殺虫効果は、正露丸の主成分である木クレオソートが、アニサキスのアセチルコリンエステラーゼという酵素を特異的に阻害することでもたらされると予想しています。

正露丸は、もともとは「征露丸」と表記された日露戦争時代に遠征する兵士に持たせた歴史ある古い薬です。

1930年代の征露丸の広告
1930年代の征露丸の広告 / Credit:Wikipedia

それが現代でもまだ見つかっていなかったアニサキス症の特効薬だったとすると、本当に驚きです。

研究者は論文の最後に、「私たちの知る限り、これはアニサキスの幼虫に対して強い殺線虫活性を持っている薬の最初の報告である」と述べています。

【編集注 2021.09.09 8:00】
記事内容に一部誤字があったため、修正して再送しております。
【編集注 2022.06.10 17:40】
記事内容の表現を、一部修正して再送しております。

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