予測が上手くいっているかを判断する脳回路を発見! 仮想世界でGO
予測が上手くいっているかを判断する脳回路を発見! 仮想世界でGO / Credit:理化学研究所
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「自らの未来予測が正しいか」を判断する脳回路がお魚にもあった

2021.11.18 Thursday

自分の予測を評価する脳回路があるようです。

日本の理化学研究所で行われた研究によれば、ゼブラフィッシュの脳において、予測の正しさと間違いを感知する回路を発見したとのこと。

さらに予測に間違いが起こることを学んだゼブラフィッシュは、そうでない個体に比べて、リスクを最小化する動きをするようになりました。

ゼブラフィッシュの脳は脊椎動物の中でももっとも単純な構造であるものの、予測の成功と失敗を繰り返すことで、最適な行動を選択できるようです。

研究内容の詳細は『Nature Communications』に掲載されています。

最適な未来予想の実現化をモニターする神経細胞の発見 -魚の脳内モデル解読のための仮想現実空間実験システムを開発- https://www.riken.jp/press/2021/20210929_2/index.html
Zebrafish capable of generating future state prediction error show improved active avoidance behavior in virtual reality https://www.nature.com/articles/s41467-021-26010-7

予測が上手くいっているかを判断する脳回路を発見!

予測が上手くいっているかを判断する脳回路を発見!
予測が上手くいっているかを判断する脳回路を発見! / Credit:理化学研究所

脊椎動物にとって学習と予測の最適化は生存に直結する問題です。

そのためには、自分が行っている行動が予測に合致しているかどうか、合致していない場合はどうすべきかを判断する回路があると予測されています。

しかしこれまでの研究では、実際にどこの細胞のどのような活動が、それら予測にかかわる判断を行っているかは不明でした。

そこで今回、理化学研究所の研究者たちは色素が欠損した透明なゼブラフィッシュを仮想空間で活動させることで、ゼブラフィッシュの脳細胞がどのように「予測」を行っているかを調べることにしたのです。

研究者たちはまず、上の図のようにゼブラフィッシュを中央に固定し、周囲を囲む映像パネルを操作することで「青色の区域では進んで」「赤色の区域なら止まる」ように訓練しました。

またゼブラフィッシュの口にはチューブが取り付けられ、呼吸用の水流が供給されています。

ゼブラフィッシュはルールを学習して電撃をさけるようになる
ゼブラフィッシュはルールを学習して電撃をさけるようになる / Credit:理化学研究所

なお訓練にあたっては間違った色で止まったり進んだ場合には、体の両側に刺し込まれた電極からペナルティーとしての電撃を受けることになります。

訓練が成功すると上の動画のように、ゼブラフィッシュは青いトンネルの仮想世界に置かれた時は中央で尻尾を振り、赤い安全な領域に逃れるようになります。

このとき研究者たちが訓練済みのゼブラフィッシュの脳の活動を調べると、色に反応して活動し始める細胞集団を発見。

またルールを逆転させてしばらくペナルティーを受けてもらうと、この細胞集団の活動が低下していくことが確認されました。

この結果は、ゼブラフィッシュには自分の「予測の正しさ」に対応して反応する細胞集団があることを示します。

次に研究者たちは、仮想世界の物理法則を変更し、ゼブラフィッシュが尻尾を振っても進まない状況を作り出しました。

人間で例えるならばいくら走っても景色が流れていかないという、異常な世界と言えるでしょう。

すると興味深いことに、ゼブラフィッシュの脳ではまた別の細胞集団が活性化している様子が観察されるようになりました。

研究者たちが仮想世界の物理法則と色のルールを駆使して調査した結果、この新たな細胞集団は、予測とは違う現象が起きている時に活性化すると判明します。

つまりゼブラフィッシュの脳には、予測の正しさを検知する細胞集団と、予測の間違いを検知する細胞集団が別個に存在していることを示します。

ですがより興味深い結果は、予想通りの結果を得たゼブラフィッシュと物理法則が異常な世界を体験したゼブラフィッシュを比べた時に観察されました。

常に予想通りの結果を得たきたゼブラフィッシュは制限以内に特定の色のゾーンを脱出しなければ電撃を受ける場合でも、脱出中に途中休憩をはさむ時間が多くなりました。

一方で、物理法則の安定しない世界を体験したゼブラフィッシュは常に動き続け、物理法則が歪んでいないことを確認しつつ、ペナルティーをうけかねない領域を素早く通り抜けました。

この結果は、予測の間違いがあるということを体験することで、ペナルティーを受けるリスクを最小化するような判断が可能になったことを示します。

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