細部を覚えていないのは脳機能が正常な証拠
細部を覚えていないのは脳機能が正常な証拠 / Credit:Depositphotos
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「細部を覚えていない」ことはボケではなく脳が正常に機能している証だった

2021.11.22 Monday

私たちの脳は、細部を忘れたり、間違って記憶していたりする場合があります。

「先週、ピクニックのお弁当に入れてくれた梅おにぎり美味しかったよ」なんて話を家族としたら、「あら、作ったの高菜のおにぎりよ」なんて言われたり、そんな記憶違いは日常でちょくちょく起こります。

そんなふうに、つい最近の出来事が正確に記憶できていないと、「私、ボケてきた?」と不安になるかもしれません。

最近のことを記憶違いしてしまうのは、いわゆるボケの始まりなのでしょうか?

ところがアメリカ・ロンチェスター大学(University of Rochester)の認知科学者ロバート・ジェイコブス氏は、「細部を覚えていないのは脳機能が正常に働いている証拠」だと語ります。

実のところ、記憶の不確かさを理由に、脳機能の低下を心配する必要はないかもしれません。

Misremembering might actually be a sign your memory is working optimally https://theconversation.com/misremembering-might-actually-be-a-sign-your-memory-is-working-optimally-166089

人間の知覚や認知は最適なのか?

私たちは、細部を事実とは異なって記憶する場合があります。

しかしこれは、人間のが最適化した結果だと言われています。

例えば、人には動いている物体の速度を過小評価する傾向があるようです。

これは人間の運動知覚が最適でないことを示すものでしょうか?

人は物体の速度を過小評価する
人は物体の速度を過小評価する / Credit:Depositphotos

2002年の研究では、「物体の速度を過小評価すること」が、統計学の観点で見るとむしろ最適な反応だったと分かりました。

なぜなら、「世の中のほとんどの物体は止まっているか、ゆっくりと動いている」からです。

確かに、私たちの目に映る情報の大部分(景色など)は、ほとんど動きません。

そのため脳は、それら一般的な情報(常識)を考慮して、知覚した物体の速度を下方修正したのです。

「常識で考えると、物体はそんなに速く動かないよね」と結論付けるわけです。

もちろん結果だけを見ると間違った認知なのですが、これは脳が正常に働いている証拠でもあります。

これには入手情報の不完全さも関係しています。

人の目は機械ではないので、物体の速度を正確に測定できるわけではありません。

そのため脳はその不完全な視覚情報を補うために、一般論を持ち出して補完していたのです。

これはつまり、脳ができるだけ正しい認知を得るために最適化した結果だと言えるでしょう。

では、記憶についてはどのように考えられますか?

次ページ細部を間違えて覚えるのは脳の最適化によるものだった

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