アホウドリの世界で「温暖化離婚」が増加中
アホウドリは海洋に生息し、飛行できる鳥類の中では最大級の鳥です。
一夫一妻であることで知られ、ペアは若い頃に数年間交際したあと、お互いに生涯の伴侶となります。
一旦ペアが成立してしまえば、その関係は数十年にも及び、別れることは滅多にありません。
先行研究によると、アホウドリの離婚率は通常、1〜4%に留まるとのことです。
本研究では、2004年から2019年にかけてフォークランド諸島に生息するマユグロアホウドリを対象に、ペアの関係性を追跡調査しました。
それと並行して、どう地域の気象観測や環境モニタリングのデータも記録。
両者のデータを比較した結果、アホウドリの離婚率は、海面温度が高い年に急上昇することが分かったのです。
平均水温が低い年では離婚率が平均1〜4%、中には1%を下回る年もありました。
ところが、この割合は水温の上昇に応じて増加し、最も水温が高かった2017年には最大7.7%に達していたのです。
2018年と2019年に海水温が再び低下すると、離婚率も低下しています。
一体、なぜでしょうか。
温暖化のストレスと栄養不足で、繁殖が困難に
先行研究によると、海面温度が上昇した場合、上層部の温かい水と下層部の冷たい水がうまく混ざらなくなり、栄養分が行き渡らなくなります。
その結果、アホウドリが到達できる範囲の栄養分が少なくなり、空腹感が増大して、パートナーとの繁殖に影響が出てしまうのです。
空腹のために、どちらかのパートナーが卵やヒナの世話を放棄することもあります。
また、メスの栄養不足により、産卵できなくなったり、卵が孵化しなかったり、ヒナがすぐ死んでしまうケースも見られました。
チームは「アホウドリのペアは、自分のストレスを環境ではなくパートナーのせいだと勘違いし、離婚を決断しているのかもしれない」と指摘します。
実際、海面温度が高い年には、繁殖に成功したメスでもパートナーを捨ててしまうことがありました。
さらに、卵が孵化しなかったペアでは、卵が無事に孵化したペアと比べ、パートナーと別れる確率が5倍以上高くなっています。
そして、アホウドリのペアは一度離婚してしまうと、復縁の可能性はきわめて低く、通常は新しいパートナーを探しに行きます。
研究チームは「深刻化する温暖化によりストレスが増大することで、アホウドリの繁殖と生態系に甚大な被害が出るかもしれない」と懸念しています。
温暖化の魔の手は、生物の夫婦仲にまで及び始めているようです。