2000年前の先住民は、オスのサケをメインに漁獲し、メスは逃していた
2000年前の先住民は、オスのサケをメインに漁獲し、メスは逃していた / Credit: Thomas Royle et al., Scientific Reports(2021)
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2000年前のカナダ先住民は、オス鮭ばかり獲り、メスは逃していた

2021.11.30 Tuesday

2,000-Year-Old Salmon DNA Reveals Secret to Sustainable Fisheries https://www.the-scientist.com/news-opinion/2000-year-old-salmon-dna-reveals-secret-to-sustainable-fisheries-69466
Indigenous sex-selective salmon harvesting demonstrates pre-contact marine resource management in Burrard Inlet, British Columbia, Canada https://www.nature.com/articles/s41598-021-00154-4

人類は古くから、海や山の幸など「自然の恵み」によって命を繋いできました。

しかし、川魚のように豊富に存在する資源も乱獲が行き過ぎると、繁殖が追いつかずに枯渇し、失われてしまう恐れがあります。

では、海や川の魚に頼って生きていた古代人は、どうやってこの問題をクリアしたのでしょうか。

カナダの複数大学による共同研究チームはこのほど、北アメリカの北西部沿岸に数千年にわたって居住してきたツレイル・ウォウトゥス(Tsleil-Waututh)族と協力し、当時のサケ漁の実態を調査。

その結果、地元先住民は、オスをメインに漁獲し、メスの多くは獲らないことで、サケの枯渇を防いでいたことが示唆されました。

当時の人々はすでに、メスを獲り過ぎるとサケ漁が続かなくなることに気づいていたのでしょうか。

研究は、11月10日付けで学術誌『Scientific Reports』に掲載されています。

 

PCR法から「オス鮭」ばかり食べていたことが判明

研究チームは、カナダ北西部・ブリティッシュコロンビア州の南西に位置するフィヨルド、バラード入り江沿いを対象に、4つの歴史的集落から採取したサケの骨を調査しました。

分析した骨は全部で116個、最も古いものに約2000年前の骨があります。

今年6月、骨から抽出した古代のDNAを調べたところ、地元民が収穫していた主な種はシロザケ(学名:Oncorhynchus keta)であることが判明しています。

しかしその後、当時の漁師が、メスよりもオスのサケを好んで獲っていたことを示唆する証拠が発掘されたため、チームは、2回目の遺伝子分析を行うことにしました。

遺伝子分析した古代のサケの脊椎骨
遺伝子分析した古代のサケの脊椎骨 / Credit: Dan Robitzski(The Scientist) – 2,000-Year-Old Salmon DNA Reveals Secret to Sustainable Fisheries(2021)

シロザケのオスとメスは、生きている間こそサイズや色の違いによって簡単に見分けられるものの、骨だけではほとんど見分けがつきません。

そのため、DNAを抽出することが、性別の判定には不可欠です。

「それでも、遺伝情報を得ること自体、並大抵の作業ではない」と研究主任の一人で、サイモン・フレーザー大学(SFU・カナダ)のトーマス・ロイル(Thomas Royle)氏は話します。

そこでチームは、特定のDNA断片を複製して増幅させる「PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)」を採用しました。

PCRを使えば、ごく微量なサンプルでも、わずかなDNAの中から特定の配列のみを増やすことで、目的の遺伝子配列の有無が分かります。

今回のPCRは、特に「sdY」という遺伝子を増幅するよう設計されました。

sdYは、これまでの研究で、サケのオスの性を決定する遺伝子であることが確認されています。

そして、PCRの結果、4つの集落のうち2つで圧倒的にオスの骨が多く、残り2つではオス・メスのバランスが取れているものの、メスが上回ることはありませんでした。

4つの集落での割合(白がオス、黒がメス)
4つの集落での割合(白がオス、黒がメス) / Credit: Thomas Royle et al., Scientific Reports(2021)

集落の一つでは、オスの骨がメスの2倍以上に達しており、もう一つではメスの骨がまったくなかったとのことです。

ここから、漁場によって戦略を変えていることが伺えるものの、この偏りが先住民の意図したところなのかは判断できません。

そこでチームは、ツレイル・ウォウトゥス族の人々に協力を依頼し、同族の習慣についての民族誌的なアプローチを取りました。

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