マリモに年齢があることが判明
マリモに年齢があることが判明 / Credit: 神戸大学 – マリモにも年輪がある!〜地上最小スケールの栄養循環〜(2021)
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マリモのMRI調査から「年輪」を発見! 年齢推定も可能に(神戸大学) (2/2)

2021.12.04 Saturday

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マリモ内部をMRIで走査

マリモの内部を正確に知るには、切断したりしない非侵襲的な手法が必要です。

そこで本研究では、人体の内部を検査するために使われる「MRI(核磁気共鳴画像法)」を採用しました。

マリモの内部は、光合成ができないため、空洞になることが知られています。

今回のMRI検査でも、表層から4〜5センチより内側で空洞化していることが確認できました。

そして、表層から4〜5センチまでの間に、切り株に見られるような年輪が発見されたのです。

MRIで見たマリモ内部(左:直径10センチ、右:直径22センチ)
MRIで見たマリモ内部(左:直径10センチ、右:直径22センチ) / Credit: 神戸大学 – マリモにも年輪がある!〜地上最小スケールの栄養循環〜(2021)

湖の解氷期は風や波によって、マリモが湖底で回転して表面が磨かれ、結氷期はほぼ動かなくなって表面がボサボサになり、層の違いが生じます。

このことから、マリモの年輪は、樹木と同じように「年成長の記録」と断定できます。

それぞれの年輪の幅は4.5〜6.3ミリであり、直径換算すると、1年間で9〜12.6ミリほど成長することが分かりました。

つまり、球体になり始める直径5センチから、30センチの巨大マリモになるまでに、20〜28年ほどかかると算出されます。

栄養循環のメカニズムも解明

これまでの研究で、阿寒湖の群生地に流れ込む河川の栄養レベルは高くないことが分かっています。

加えて、多くの栄養を取り込む水草が周囲に繁茂しているため、マリモがどのように栄養を吸収しているか謎でした。

しかし、その答えの一つは、マリモのMRI画像の中心部にある「白い塊」(上図参照)にあったようです。

この白い塊は、マリモ内部で剥離した糸状藻の小さな集まりであり、マリモ内部の水中酸素濃度が低いときに分解され、栄養分を溶出します。

本研究では、この栄養素が外部へ溶け出していくことで、表層に広がることを特定しました(下図)。

その栄養を使って、光合成をし成長しているようです。

研究チームは、これについて、「地上最小スケールの栄養循環である」と指摘しています。

(a)風波による球状化、(b)マリモの栄養循環
(a)風波による球状化、(b)マリモの栄養循環 / Credit: 神戸大学 – マリモにも年輪がある!〜地上最小スケールの栄養循環〜(2021)

専門家たちは今、深刻化する温暖化によって、微妙なバランスを保っているマリモの球形や栄養循環が失われることを懸念しています。

研究チームは今後、物理的要因から見たマリモの成長プロセスをより詳しく究明し、マリモの保護・管理に役立てていく予定です。

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