災害現場に救助捜索ができる「レスキューラット」が誕生
災害現場に救助捜索ができる「レスキューラット」が誕生 / Credit: APOPO(Science) – Forget dogs: These rats could be the future of search and rescue(2021)
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災害現場で被災者を捜索する「レスキューラット」が登場!

2021.12.18 Saturday

レスキューアニマルといえば、オレンジ色のベストを着たイヌを思い浮かべるのではないでしょうか。

しかし、タンザニアに本拠を置く企業・APOPOは、まったく別の動物を想定しています。

ずばり、ネズミです。

APOPOのドナ・キーン(Donna Kean)氏とチームは、過去20年の間、アフリカオニネズミ(African giant pouched rat)という好奇心旺盛な種を訓練して、結核や地雷の探知に取り組んできました。

そして今、彼らは災害現場での捜索と救助に特化したネズミの訓練に取り組み始めています。

これを受け、サイエンス(Science)は、キーン氏にインタビューを行い、レスキューラット(RescueRats)と称される、この新しいプロジェクトについて話を聞きました。

以下の回答は、すべてキーン氏の発言です。

Forget dogs: These rats could be the future of search and rescue https://www.science.org/content/article/forget-dogs-these-rats-could-be-future-search-and-rescue

災害現場で被災者を捜索する「レスキューラット」が登場!

Q:なぜイヌではなくネズミなのか?

A:ネズミは嗅覚が優れていますし、イヌと同じように柔軟な訓練が可能です。

また、イヌのように一人のトレーナーに縛られることもありません。

さらに、イヌには不可能な瓦礫の密集地にも入り込めるため、彼らのサイズも捜索に有効です。

飼育下での寿命はおよそ8年ですが、引退後は10~11年生きた個体もいます。

アフリカオニネズミはここタンザニアの固有種で、20年前から地雷探知プログラムを行っています。

トレーニング設備もすべて整っていますし、現地の素晴らしいトレーナーもいます。

APOPOのミッションは人道的なプロジェクトに重点を置いており、現地の防災能力を高めるにはもってこいの方法です。

Q:どうやってネズミを訓練するのか?

A:私たちが最初にしたことは、ネズミがスタート地点に戻るよう訓練する(ステージ1)ことでした。

トレーナーが誰もいない部屋にネズミを放し、うろうろさせました。

ビープ音を鳴らすと出発点に戻ってくるよう訓練し、戻ってきたらご褒美として、アボカドとバナナを混ぜた好物のエサを与えました。

次に、ネズミのベストにつけてあるゴム球を引っ張る訓練(ステージ2)を行いました。

ボールにはマイクロスイッチが取り付けられていて、それを引っ張るとビープ音が鳴る仕組みになっています。

実際の現場では、これが救助隊への信号となるのです。

それが確実にできるようになったら、最後に、救助対象となる人間を訓練に導入します。

目標は、ネズミがこの救助対象者のところへ行き、ボールを引っ張って、ビープ音を聞いたら元の場所へ戻ること(ステージ3)です。

Q:訓練の成功率はどのくらい?

A:トレーニングは今年8月に開始し、現在も継続中です。

平均すると、ステージ1では、ビープ音から3秒以内に確実にスタート地点に戻るのに14セッション、ステージ2では、3秒間ボールを引っ張るのに10セッションを要しました。

最も熟練したネズミは、ステージ3の基本行動シーケンス(救助対象者のところへ行き、ボールを引っ張って、スタート地点に戻る)を、わずか7セッションで確実に実行できるようになっていました。

これまでのところ、9匹のネズミはすべてステージ1と2をマスターし、6匹はすべてのシークエンスを確実に修得しています。

訓練中のアフリカオニネズミを抱えるキーン氏
訓練中のアフリカオニネズミを抱えるキーン氏 / Credit: APOPO(Science) – Forget dogs: These rats could be the future of search and rescue(2021)

Q:離乳したばかりの幼いネズミを訓練しているようですが、どのようにしつける?

A:性格、適性、能力など、個体差が大きいですね。何匹かは、他のネズミと同じようにはうまくいきません。

例えば、ターゲットに直行してしまう子もいますしね。

一見正しい動作をしているように見えますが、ボールを引っ張らずにスタート地点に戻ってくるだけなんです。

しかし、動物と一緒に仕事をしてきた経験から言うと、彼らはいつでも私たちを驚かせてくれます。

あまりうまくいっていない子が、突如として急成長し、クラスのトップになることもあるんです。

Q:ネズミは、トレーナーからどれくらい離れられる?

A:捜索救助の場合、イヌは瓦礫に侵入することなく、瓦礫の外側を嗅ぎまわるだけです。

そのため、ネズミは、人とイヌの捜索隊が瓦礫現場で一通りの調査をした後に投入されることになります。

ネズミは、複数の侵入口から瓦礫のある場所に放つ予定です。

平均10〜20メートル、最大で30メートルくらいまで行けると思いますので、広い範囲をカバーすることができるでしょう。

Q:ネズミが災害現場を走り回ったら、人々を怖がらせるのでは?

A:ネズミや動物に恐怖心を抱く人がいる場合は、確かに問題があるかもしれません。

しかし、救助目的で導入・使用されることが決定すれば、こうした救助活動があり得ることを知ってもらうためのマーケティングキャンペーンを行うことができます。

また、バックパックを背負っており、マイク、ライト、カメラを装備しています。

バックパックからは「私はレスキューラットです、あなたを助けるためにここにいます」というような音声を流すこともできるでしょう。

レスキューラットの訓練の様子は、こちらの記事内(英語サイト)で閲覧できます。

Forget dogs: These rats could be the future of search and rescue

https://www.science.org/content/article/forget-dogs-these-rats-could-be-future-search-and-rescue

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