IBD患者ほど、マイクロプラスチックの混入率が高かった
研究チームは、健常者と炎症性腸疾患(IBD)の参加者を募り、便サンプルを採取して、そこに含まれるマイクロプラスチック濃度を調べました。
その結果、IBDを患う52名の参加者では、5ミリ以下のマイクロプラスチックが、慢性疾患のない健康な参加者に比べ、約1.5倍も多く含まれていることが判明したのです。
ここで検出されたマイクロプラスチックの大部分は300マイクロメートル以下のものですが、5マイクロメートル以下の微小な粒子もわずかに含まれます。
検出されたマイクロプラスチックは合計15種類で、最も多かったのは、ポリエチレンテレフタレート(22.3〜34.0%)とポリアミド(8.9〜12.4%)でした。
こうした傾向およびアンケート調査を合わせると、主な混入経路は、ペットボトルを使った飲料水やプラスチック製の使い捨て容器での食事と見られます。
注目すべき点は、マイクロプラスチック濃度が高いほど、個人のIBD症状はより重くなっていることです。
ここから、マイクロプラスチックとIBDの因果関係が予想できますが、まだ観察段階であるため断定はできません。
炎症性腸疾患(IBD)には2種類ある
炎症性腸疾患(IBD)は、腸内の物質に対して過剰に反応する免疫システムによって生じる疾患で、2017年には世界で700万人がIBDと診断されました。
IBDは通常、2つの主要な疾患に分類されます。
ひとつは「クローン病」で、慢性の炎症が口〜肛門にいたる消化管で起こり、腹痛・下痢・血便・発熱・肛門付近の痛みや腫れ・体重減少を引き起こします。
もうひとつは「潰瘍性大腸炎」で、大腸粘膜に炎症が生じ、 クローン病と同様の症状を起こします。
いずれも何らかの免疫異常が原因であること以外は、完全に解明されていません。
しかし、マイクロプラスチックがその一因として関与している可能性は、方々で言及されています。
過去の動物実験では、マイクロプラスチックへの暴露による副作用として、腸の炎症が指摘されていました。
また、マイクロプラスチックは、炎症に関与する活性酸素を発生させ、健康上の問題を引き起こすことも分かっています。
そう考えると、マイクロプラスチックへの腸内曝露の増加が免疫システムを過剰に働かせるとしても、まったく不思議ではありません。
ただし、研究チームは、その摂取と蓄積が健康上のリスクを高めると断言するには、さらなる調査が必要と述べています。
だからといって何もアクションを起こさないのは違います。
プラスチックゴミの増加が、世界の気候や生態系にダメージを与えていることは確かな事実です。
こうした廃棄を止めない限り、粉々になったプラスチックは、ブーメランのごとく巡り巡って、私たちの人体に戻り続けるでしょう。