電磁波のイメージ
電磁波のイメージ / Credit:depositphotos
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絵画のように”止まった波”が現れる物理現象『超放射相転移』が起こる磁石を発見 (2/3)

2022.01.14 Friday

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電流と磁場がお互いを支え合う

炭は熱すると赤く輝くようになる
炭は熱すると赤く輝くようになる / Credit:depositphotos

物質を加熱していくと光を放つようになります。

たとえばキャンプで炭焼きバーベキューをすると、熱した炭が赤く輝くのに気づくと思います。

なぜ、炭は輝くのでしょう?

先ほども述べたように、温度とは分子や原子の運動エネルギーです。

物質を熱すると、原子を構成する電子も激しく運動するようになります。電子が激しく運動するとそこには電流が生まれます。

そして電流が流れるとその周囲には磁場が発生し、これらの作用は電磁波となって空間を広がっていきます。

私たちが光と呼ぶものは、可視波長の電磁波のことなので、熱した物質は光を放つようになるわけです。

コイルを敷き詰めた空間で、温度を上げたり下げたりする実験をした場合、物質を熱したときは、電子はめちゃくちゃに激しく動き回るため、かなり乱雑な電磁波が生じます。

これは炭が光を放っているのと同じ状況です。

しかし、逆に物質を冷やしていった場合、どうなるでしょうか?

このとき、非常に興味深いことが起きるです。

(左)温度を上げたとき電子の熱運動でコイルに乱雑な電流が生じ、乱雑な電磁波が放出される。(右)温度を下げるとすべてのコイルで同じ向きの電流が流れ、均一な磁場が発生する。
(左)温度を上げたとき電子の熱運動でコイルに乱雑な電流が生じ、乱雑な電磁波が放出される。(右)温度を下げるとすべてのコイルで同じ向きの電流が流れ、均一な磁場が発生する。 / Credit: 超放射相転移を示す物理系の探索,馬場 基彰/光科学技術研究振興財団平成29年度研究表彰受賞講演抄録. P.4-P.7

コイル内の電子の熱エネルギーが下がり、周囲の電磁場のエネルギー総和の方が高くなっていくことで、コイルに発生した電流の作る磁場が、さらにコイルに電流を発生させ、お互いを支え合った状態が生まれるのです。

これが安定すると、周囲の電磁波が止まった波となり、物質と周囲の空間を含めた相転移が起きるのです。

この変化が超放射相転移と呼ばれます。

こうした現象が存在することは、1973年に理論的に予言されていました。

しかし、現在に至るまで現実に観測されたことはありませんでした。

けれど今回、ついに超放射相転移を起こす磁性体が発見されたのです。

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