ヒマラヤ山脈にある現在世界最高峰の山「エベレスト」。海抜8848メートル。
ヒマラヤ山脈にある現在世界最高峰の山「エベレスト」。海抜8848メートル。 / Credit:jp.depositphotos
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ヒマラヤの3倍もあった「古代スーパーマウンテン」が生命進化を促していた (2/2)

2022.02.07 Monday

前ページ超大陸に形成された「スーパーマウンテン」

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山は重要なミネラルを海に供給した

進化の重要な時期と、スーパーマウンテンの形成された時期に関連がある理由について、研究チームの1人ANUのヨッヘン・ブロックス(Jochen J. Brocks)教授は次のように説明します。

「山が侵食されると、リンや鉄など生物にとっての必須栄養素が海に流れ込み、生命循環の中に過供給されることで、進化をさらに複雑にする可能性があります」

私たちから見ると、山は不動の存在に見えますが、実際のところ地球の歴史のスケールで見た場合、高い山ほど非常に急速に侵食されていきます。

それは季節風であったり、大気中の氷などが原因で、大きな山はこうした自然の力の矢面に立つため、急速に削られていくのです。

侵食で削られた地形の例。山はさまざまな自然の力で削られていく。
侵食で削られた地形の例。山はさまざまな自然の力で削られていく。 / Credit:jp.depositphotos

そして、それは大地の奥底にあった鉱物(ミネラル)を放出し、また岩石中に閉じ込められていた酸素を開放したと考えられます。

このため、研究チームはスーパーマウンテンの存在が地球の酸素濃度上昇にも関連していた可能性があると話します。

酸素濃度の上昇は、大きな生命が誕生するために重要な要因であり、そしてその時期も2つのスーパーマウンテンの形成時期と一致するようです。

真核生物誕生のきっかけや、カンブリア紀の生物の巨大化・多様化の原因については多くの議論がありますが、海に流れ込んだミネラル分の上昇や酸素濃度の上昇が関連している可能性が指摘されています。

研究チームは、この生命進化と関連する2つの時期以外に、スーパーマウンテンが形成されていた証拠はないと話します。

また1つ目のスーパーマウンテンが侵食により失われ次のスーパーマウンテンが形成されるまでの約18億年前から約8億年前の期間は、進化が鈍化していたと言われる「退屈な10億年(boring billion)」と呼ばれる時期と一致しています。

退屈な10億年の期間を示した図
退屈な10億年の期間を示した図 / Credit:東京大学大学院理学系研究科

研究者は「進化の鈍化は、その期間中にスーパーマウンテンが存在しなかったために、海洋への栄養供給が減少していたことに起因する」と話します。

これら生命進化における重要時期とスーパーマウンテン形成時期の一致を偶然で片付けることは難しいでしょう。

巨大な山の存在が、地球の複雑な生命を育んだ可能性は高いようです。

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