変形する陸空両用ドローン
変形する陸空両用ドローン / Credit:VPI_New soft robot morphs from a ground to air vehicle using liquid metal(2022)
technology

ロマンの塊! 車両と航空機への変形機構を備えた「陸空両用ドローン」

2022.02.14 Monday

ロボットや乗り物の「変形(トランスフォーム)」はロマンある機能ですが、なかなか現実でお目にかかることはありません。

しかしアメリカ・バージニア工科大学(Virginia Polytechnic Institute and State University)機械工学科に所属するマイケル・バートレット氏ら研究チームは、可逆性と可塑性を兼ね備えた新しい材料を開発することで、シンプルな変形機構を実現しました。

この新材料を利用したドローンでは、機体を変形させることで「空を飛ぶ」ことも「陸を走る」ことも可能だといいます。

研究の詳細は、2022年2月9日付の科学誌『Science Robotics』に掲載されました。

New soft robot morphs from a ground to air vehicle using liquid metal https://vtx.vt.edu/articles/2022/02/eng-bartlett-morphing-drone.html Shape-shifting Robots Adapt With Cleverly Designed Bodies, Grippers https://spectrum.ieee.org/shapeshifting-robots
Shape morphing mechanical metamaterials through reversible plasticity https://www.science.org/doi/10.1126/scirobotics.abg2171

日本の切り紙を応用! 可塑性と可逆性の両方を持つ材料を開発

通常、ロボットドローンを変形させるには、複数のパーツとギア、また小さなモーターをたくさん使わなければいけません。

しかしこれでは構造が複雑になり、重量も大きくなります。

もっとシンプルな変形はできないのでしょうか?

例えば、1つのパーツを何度も折り曲げたり元に戻したりでき、しかも変形した後に強度を維持できるような材料があれば、より自由な変形・解除が可能になるはずです。

そこで研究チームは、可逆性(元の形に戻る性質)と可塑性(変形してその形を維持する性質)の両方の性質を併せ持った「欲張りな」材料を開発したのです。

彼らがインスピレーションを受けたのは、日本の「切り紙」です。

切り紙は紙を切って造形する芸術の1つですが、チームは、幾何学模様の切り紙が「変形」と「強度の保持」に役立つと考えました。

切り絵を応用した新しい材料
切り絵を応用した新しい材料 / Credit:VPI_New soft robot morphs from a ground to air vehicle using liquid metal(2022)

そして切り紙のような網目構造のゴムチューブの中に、低融点合金を注入

この合金の融点は60℃であり、少し加熱するだけで液体になるという特徴があります。

ゴムチューブの中には細い糸状のヒーターも組み込まれているため、合金は少しの操作で固体から液体へと変化させられるのです。

ヒーターの熱で形が元に戻る
ヒーターの熱で形が元に戻る / Credit:VPI_New soft robot morphs from a ground to air vehicle using liquid metal(2022)

つまりこの新しい材料は、力を加えると変形し、そのまま形が維持され、網目構造により強度も保たれます(可塑性)

しかも加熱することで合金が液体に戻るので、元の形に戻ることもできる(可逆性)のです。

そしてチームは、この可逆性と可塑性を兼ね備えた新しい材料を使って、変形ドローンを作製しました。

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