腸と脳の神経系の病気の関係が明らかに。鍵はトリプトファン

biology 2018/05/19
Credit: CC0 Public Domain
Point
・腸内細菌の生成物が脳の炎症抑制に関与していることがわかる
・生成物はトリプトファンの腸内細菌による分解産物で、脳の免疫細胞・マイクログリアを介して炎症を抑える
・今回発見された機構は、多発性硬化症だけでなく、アルツハイマー病などの神経性疾患にも関与する可能性

 

16日に“Nature”誌に掲載された新たな論文で、腸と脳の間の新たな関係が明らかになりました。腸内細菌が生み出した副産物が神経性の病気の進行に影響をあたえることと、その仕組がわかったのです。

Microglial control of astrocytes in response to microbial metabolites
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0119-x

ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究者たちは、実験動物と患者の細胞の両方を使って、腸と脳の接続に係るキープレイヤーを解明。同時に、免疫細胞と脳細胞の間のクロストークも明らかにしました。病気に関わる信号伝達系を突き止めたことで、多発性硬化症や他の神経疾患の治療法の開発の助けとなるでしょう。

研究で焦点を当てたのは、腸内細菌が中枢神経系で主要な働きをする2種類の細胞に与える影響です。その2つの細胞とは、免疫系のグリア細胞であるマイクログリアと星型のアストロサイト。

マイクログリア細胞は中枢神経の掃除屋で、増殖した細菌や損傷した細胞、その他の邪魔な物質を取いてきれいにします。しかし、一方で化合物を分泌することで、アステロサイトの神経毒性を誘発してしまいます。そのダメージは多発性硬化症を含む多くの神経性疾患をもたらすと考えられています。

新たな研究では、腸内細菌の生成物が直接マイクログリアに作用して炎症を抑える可能性が初めて示されました。細菌が生み出す生成物は、食物に含まれるアミノ酸であるトリプトファンを分解した副産物として生み出されます。トリプトファンは乳製品やナッツ類、肉類などタンパク質の豊富な食品に多く含まれていますが、その分解副産物がマイクログリアに作用して、脳の炎症を抑えられる可能性があるのです。

研究チームは多発性硬化症のモデルマウスを使って、その腸内細菌を検査し、餌の種類を変えることで変化が出るか調査。その結果、トリプトファンの分解産物が脳血管障壁を通過でき、神経変性を抑える抗炎症経路を活性化させることを発見しました。また、人の多発性硬化症の脳の検体を調べたところ、同じ経路と構成メンバーがそろっている証拠を得ました。この同じ経路の活性は、アルツハイマー病や膠芽腫と関連付けられています。

「私達が解明した機構は、多発性硬化症に加えて、他の神経性疾患とも関係がありそうです。これらの仕組みの理解によって、多発性硬化症や他の病気の新しい治療法を発見できるでしょう」と責任著者のフランシスコ・キンタナ博士は展望を語りました。

 

うんちは腸が「思考」することで促される。第二の脳、腸に関する最新研究

 

via: Medical Press/ translated & text by SENPAI

 

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