メスと交尾するオス(右)と、協力仲間のオス(左)
メスと交尾するオス(右)と、協力仲間のオス(左) / Credit:中部大学 人間の協力行動の進化に迫る ─ベニガオザルで高度な協力行動を発見(松田一希准教授、豊田有創発学術院研究員ら)
biology

ハーレムでは協力できない! ベニガオザルから見る「協力行動の起源」

2022.03.22 Tuesday

2022.03.17 Thursday

協力の起源に迫る発見がなされました。

日本の中部大学で行われた研究によれば、ヒト以外の動物(ベニガオザル)において血縁関係にないオス同士の「協力」行動が確認された、とのこと。

地球上には群れを作り協力し合う動物は数多く存在しますが、実はほぼ全てが何らかの血縁関係をベースにしており、ヒト以外の動物で血縁関係にないオス同士が協力し合うことはコウモリなどの一部を覗いてほぼ皆無となっています。

そのため研究者たちはベニガオザルの血縁関係にない協力行動が人間の「協力」の起源になっている可能性があると述べています。

しかし、ベニガオザルのオスは何を動機にして、血縁関係にない「他人」と協力する道を選んだのでしょうか?

研究内容の詳細は2022年3月7日に『Frontiers in Ecology and Evolution』にて公開されています。

人間の協力行動の進化に迫る ─ベニガオザルで高度な協力行動を発見 https://www3.chubu.ac.jp/research/news/27916/
Mating and Reproductive Success in Free-Ranging Stump-Tailed Macaques: Effectiveness of Male–Male Coalition Formation as a Reproductive Strategy https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fevo.2022.802012/full

ヒト以外のほとんどの動物のオスは血縁関係にないと協力しない

人間の「協力の起源」は女性の保護と独占にあるかもしれない
人間の「協力の起源」は女性の保護と独占にあるかもしれない / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

地球上に存在するほとんどの動物の群れは血縁関係によって成り立っています。

ときおり外部から侵入したオスやメスが群れに受け入れられることはあっても、あくまで例外的なパターンであり、基本は全て血縁関係によって説明できます。

特に人間に近い霊長類においては血縁関係と協力行動は深く結びついており、血縁関係にないオス同士が協力行動をとる例はほぼ皆無でした。

しかし中部大学の研究者たちがベニガオザルの行動を分析した結果、一部の群れでは他のサルと同じく一番強いオスが交尾を独占していた一方で、いくつかの群れでは血縁関係にないオス同士が協力し合い、群れのメスが他の群れのオスと交尾することを防いでいる様子が確認できました。

ヒト以外の動物において、血縁関係にないオス同士が協力的にふるまう様子が確認されるのは非常に珍しい現象です。

研究者たちは、ベニガオザルのメスの共同保護・共同独占が動物の協力行動の進化的な起源となる可能性について言及しています。

しかしこのベニガオザルの協力行動は、群れの生存においていったいどんな利点があるのでしょうか?

次ページ動物の協力行動の起源はどこにあるのか?

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