軍港と思われていた人工プールは「星座を映す水の鏡」だった
軍港と思われていた人工プールは「星座を映す水の鏡」だった / Credit: Lorenzo Nigro et al., Antiquity(2022)
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2022.03.22 Tuesday

紀元前シチリア島の都市には「天空の星座を映す聖なる水鏡」のプールがあった (2/2)

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天空を映し出す「水鏡」だった

プールを隔てる南側の壁
プールを隔てる南側の壁 / Credit: Lorenzo Nigro et al., Antiquity(2022)

研究チームは、2002年から2020年にかけて、人工プール(52.5×37メートル)の詳細な調査を行いました。

まず注目すべきは、プールの端にギリシャ神話のポセイドンに近いとされる神・バアル(Ba’al)の神殿が見つかったことです。

ニグロ氏は「もしプールが軍港であれば、神殿ではなく、軍備や港に必要な施設を置くはずだ」と指摘します。

さらに、プールに貯まっていたを抜いたところ、盆地は海には繋がっておらず、なんと淡水が湧き出ていることが判明しました。

他にも、複数の祭壇、「ステラ」と呼ばれる彫刻の施された石版、奉納品(宗教的な目的のために人々が置いていったもの)、プールの中央にかつてバアル神の立があったと見られる台座などが、次々と見つかります。

「バアル神の右足」が残っていると見られる台座
「バアル神の右足」が残っていると見られる台座 / Credit: Lorenzo Nigro et al., Antiquity(2022)
復元イメージではこんな感じ
復元イメージではこんな感じ / Credit: Lorenzo Nigro et al., Antiquity(2022)

ニグロ氏は、「決定的だったのは、2つの手がかりが見つかったこと」だったと話します。

1つは、海の方向に向かってプールを塞ぐ頑丈な壁の発見。

もう1つは、プールが海水でなく、地下帯水層から真水を集めていたことです。

これらの証拠から、人工プールは神へ捧ぐ目的、あるいは地中海を旅する際の真水をためる目的があったと見られます。

夜空に浮かぶ「星座」に合わせた設計

さらにチームは、このプールが「特定の座を映し出すように設計された証拠」を発見しました。

まずプールは、ぎょしゃ座で最も明るい1等星の「カペラ(Capella)」が、秋分の日に北に昇る様子を映し出すのに適した配置にあります。

それから、プールの南側にあるステラ(石版)は、夜空で最も明るい星である「シリウス(おおいぬ座α星)」が、秋分の日に南から昇ってくる位置を指し示していました。

また、バアル神と同一視される「オリオン座」(ギリシア神話のオリオンはポセイドンの子とされる)は、冬至に東南東に昇り、モティアの神殿はまさにこの方角を向いていたのです。

以上のことから、ニグロ氏は「人工プールを含む聖域は、夜空の星座の動きに合わせた一種の”天球儀”だった可能性が高い」と結論します。

オリオン座
オリオン座 / Credit: canva

サッサリ大学(University of Sassari・伊)の考古学者で、研究には参加していないミケーレ・ギルギス(Michele Guirguis)氏は、こう述べています。

「これらの証拠は、盆地がのための内港ではなく、神聖な池であるという新しい解釈を支持しています。

もし、ニグロ氏にプールの水を抜く勇気がなかったら、モティアの民が守ってきた真水の水脈が見つかることもなかったでしょう。

個人的には、氏の提案した解釈に全面的に同意します」

聖なるプールは現在、再び淡水が張りなおされ、中央の台座にはバアル神のレプリカ像を設置しています。

水を張りなおし、中央にバアル神のレプリカを設置
水を張りなおし、中央にバアル神のレプリカを設置 / Credit: Lorenzo Nigro et al., Antiquity(2022)

ありし日の聖なるプールは、このような姿だったのかもしれません。

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