生き物にも量子効果!? 光合成に「量子重ね合わせ」状態が観測される

animals_plants 2018/05/26
Credit: 96dpi on VisualHunt / CC BY-NC
Point
・光合成細菌の光合成複合体で2つの分子にエネルギーの重ね合わせ状態を確認
・光によって励起された分子の持続時間が理論で予測されるものと一致

 

オランダのフローニンゲン大学の研究者らは、光合成に関わる分子が非生物において見られるのと同等の量子効果を呈すると発表しました。量子力学的振る舞いが、光合成に関わる生物機構に存在することが証明されたのはこれが初めてです。光合成における量子効果の判読は、自然を範とした集光装置の開発に役立つかもしれません。研究結果は、“Nature Chemistry”で発表されています。

Identification and characterization of diverse coherences in the Fenna–Matthews–Olson complex
http://dx.doi.org/10.1038/s41557-018-0060-5

生命系における量子効果は、現在に至るまで多々議論されてきました。その基本的な考え方は、観測されるまで、電子が2つの状態を同時にとりうるというものです。これは、「シュレディンガーの猫」で知られる思考実験と比較されても良いでしょう。この猫は、毒の容器と共に箱にとじこめられています。もし、毒の容器のフタが量子系によって閉じられているとすると、そのフタは開いた状態と閉じた状態を同時に持つことが出来ます。よってこの猫は、フタを開けるまでは「死んだ」状態と「生きている」状態の両方を持つことになります。私たちの日常感覚からはかけ離れていますが、電子の振る舞いを正確に表現すると、このような不思議な描写になるのです。

 

以前の研究でも量子効果が示唆

以前の研究では、すでに微生物の中の集光分子が同時に2つの状態に励起されることを示唆する信号が発見されています。この研究では、量子効果の関与が証明されたとしていますが、その励起状態は1ピコ秒を超えていました。これは、量子論を基にした予想よりも長すぎます。ジャンセンと共同研究者は、この以前の発見が誤りであったことを論文で示しています。「彼らが報告した量子効果は単に、通常の分子の振動であることを私たちは示しました」そのため、このチームは研究を続けました。「わたしたちは、シュレディンガーの猫のような状態を観察できるのではないかと考えたのです」

 

重ね合わせの原理

研究チームは、緑色硫黄細菌で測定を行うために異なった偏光の光を使用。この細菌は光に感受性を持つ7つの分子からなる光合成複合体を持ちます。1つの光子はこれらの分子のうちの2つを励起させますが、そのエネルギーはその両方に重ね合わせ状態になります。それはまるで、猫が生きているか死んでいるかどちらかであるように、光子によって2つのうちのどちらかが励起されるのです。

「このような重ね合わせの原理においては、分光分析は特定の振動シグナルを表すはずです。そして私たちが見たのはまさにそれでした。さらに、量子効果が理論によって予測されているものと全く同じ時間だけ続くことを発見し、これらが2つの分子へのエネルギーの重ね合わせと関わっていることを証明しました」フローニンゲン大学の理論物理学者トマス・ラ・クール・ジャンセン氏は、生物系が非生物系とまったく同じ量子効果を表したと結論付けています。

この研究のために開発された観察技術は、生物系あるいは非生物系の両方の異なった系にも応用できそうです。ジェンセンはこの結果に喜び、「量子力学の魅力的な世界に興味のある人たちにとって面白い観察となりました。さらこの結果は、太陽エネルギーの蓄積や、量子コンピューターの開発などにも役立つかもしれません」

 

先日もマクロレベルで量子重ね合わせが観測されたりと、発展し続ける量子力学の世界。マクロとミクロの世界は、だんだんと近づいているのかもしれません。

 

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via: Eurek Alert!/ translated & text by SENPAI

 

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