誰かが「そこにいる」実感を音だけで与えることに成功
誰かが「そこにいる」実感を音だけで与えることに成功 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
psychology

音だけで「誰かそこにいる」実在感を与えることに成功!

2022.04.18 Monday

他者の「実在感」を伝える音とは? ―他者の存在に関わる聴覚空間情報が社会的サイモン効果を誘発― https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/zinbun/20220415
Spatial auditory presentation of a partner’s presence induces the social Simon effect https://www.nature.com/articles/s41598-022-09628-5

誰かが側にいる実感を「音だけ」で出せるようです。

京都大学と熊本大学の研究によれば、隣に人がいるかのような実在感を音だけを使って与えることに成功した、とのこと。

「誰かがいるという実感」を引き出す技術は、将来のVR技術やASMRにおいてより高い没入度を得るために必須となるでしょう。

しかし、いったいどうやって音だけで「実在感」を与えることができたのでしょうか?

研究の詳細は、2022年4月4日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。

「誰かがいる実感」を客観的に測定する

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Credit:Arina Kiridoshi et al . Spatial auditory presentation of a partner’s presence induces the social Simon effect (2022) . Scientific Reports

VRにおいて最も重要なのは、「人間(キャラクター)がそこにいる」という実在感です。

これまで実在感を得る方法として、触覚や匂いを使ったさまざまな方法が開発されてきました。

しかし「実在感」は非常に主観的な印象であり、客観的に評価することが困難でした。

ですが今回、研究チームは、古くから知られている心理効果を使って「実在感」の客観的な測定に挑むことにしました。

私たちは、隣の人と分業するとき、音に対する反応速度などの課題遂行能力が上昇する、という不思議な効果「ソーシャルサイモン効果(SSE)」が知られています。

一般的な例では、2人の被験者を並べて座らせ、左からの単音(ピー音)と右からの雑音(ザー音)をランダムに聞かせて、右から雑音が聞こえたときには右の被験者(自分)が右手で右側にあるボタンを押し、単音がした時には左側にいる被験者(パートナー)が左手で左のボタンを押します。

何の意味もない試験に思えますが……違います。

左側に座っていた被験者(パートナー)を退席させた状態で実験を続けると、右側に座った被験者はなんと、音に対する反応速度が大きく低下してしまうのです。

(※雑音だけに注意して右手でボタンを押せばいいのに、パートナーがいないとその速度が落ちていました)

この現象は1920年代から知られており、古くから心理学だけでなくスポーツなどの行動心理学の分野で研究対象となってきました。

どうやら社会的動物である人間には、他者との共同行為によって成績を上げる不思議な力が備わっているようです。

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Credit:Canva . ナゾロジー編集部

また興味深いことに、成績向上効果は、被験者が「他者の存在を実感している」ときにだけ起こることが知られていました。

距離的に近くても、分厚い壁に隔てられて他者を実感できない場合、ソーシャルサイモン効果は起こらず成績も上がりません。

一方、パートナーが遠く離れた場所にいても、メディア媒体(ビデオ通話)などを通して映像や音でパートナーを実感できれば、成績を上げる効果が発揮されます。

さらには、パートナーがロボットのような非人間であっても、存在が実感できれば成績は上がります。

原始的な人間の脳にとっては、離れていようが擬人化した存在であろうが、パートナーがいる実在感が重要であることを示します。

またこれらの結果は、パートナーが存在する実感をソーシャルサイモン効果という客観的な尺度で測定できることを意味します。

(※パートナーがいると実感しているかをアンケートで答えてもらうことも可能ですが、それは主観的なものに過ぎません)

そこで今回、京都大と熊本大の研究チームは、パートナーが存在する実在感をソーシャルサイモン効果を利用して、音だけで与えられるか調べることにしました。

音だけで他者の実在感を与えられれば、VRにおける臨場感と迫力のこもった体験も実現可能なはずです。

そして実験を行った結果、ある特定の性質を持った音が、誰かがいる実在感に必要であることが判明しました。

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