巨大翼竜はほとんど空を飛べなかった?
巨大翼竜はほとんど空を飛べなかった? / Credit: canva
paleontology

巨大翼竜はぜんぜん飛べなくて陸上で生活していた可能性が高い (2/2)

2022.05.20 Friday

2022.05.19 Thursday

前ページ「ソアリング飛行」には2種類ある

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大型の翼竜はほとんど飛べなかった?

まずもって、滑空する生物の飛行は、物体の運動(ある時間の位置と速度)を計算する「ニュートンの運動方程式」で記述できます。

チームはこれを用いて、2種の絶滅巨大鳥類:アルゲンタヴィスとペラゴルニス・サンデルシ、2種の翼竜:プテラノドンとケツァルコアトルスのソアリング能力と、持続的な滑空に必要な風速を計算し、現生鳥類と比較しました。

前2種の翼長は6〜7mで、プテラノドンは5〜6m、史上最大級の翼竜として知られるケツァルコアトルスは10mです。

史上最大の翼竜ケツァルコアトルスの復元像がコワすぎる

その結果、アルゲンタヴィスとペラゴルニス・サンデルシは、サーマルソアリングに適していたことが判明。

またプテラノドンは、ダイナミックソアリングに適していたとする先行研究もありますが、今回の結果は、サーマルソアリングに適していたことを示しています。

一方で、ケツァルコアトルスは、いずれの能力も他の飛行生物に比べてはるかに低く、ソアリング飛行に不向きであることが判明しました。

2種のソアリング飛行(ピンクの矢印は左側が従来の説、右側が今回判明した方)
2種のソアリング飛行(ピンクの矢印は左側が従来の説、右側が今回判明した方) / Credit: 名古屋大学 – 巨大翼竜はほとんど飛ばなかった ~絶滅巨大飛行生物と現生鳥類のソアリング能力の比較~(2022)

絶滅飛行生物の中でも特にケツァルコアトルスは、飛行能力について長年にわたり議論が交わされています。

これまでは、その巨体のせいで羽ばたき飛行はほぼ続かず、長距離移動には、上昇気流を用いる「サーマルソアリング」に頼っただろう、と考えられてきました。

サーマルソアリングにおいて、生物は上昇気流を受けながら、円軌道を滑空することで上昇します。

このとき、上昇気流の速度が降下する速度を上回れば上昇でき、また、滑空する円の半径(旋回半径)が小さいほど、上昇気流が強い範囲にとどまりやすくなります。

ところが、これらに基づいた計算によると、ケツァルコアトルスのサーマルソアリング性能は、他の生物に比べて極端に低いことが示されたのです(下図)。

サーマルソアリング性能の種間比較(線が上にあるほど能力が高い)
サーマルソアリング性能の種間比較(線が上にあるほど能力が高い) / Credit: 名古屋大学 – 巨大翼竜はほとんど飛ばなかった ~絶滅巨大飛行生物と現生鳥類のソアリング能力の比較~(2022)

以上の結果から、ケツァルコアトルスおよび同サイズの超大型翼竜は、ほとんど飛行せず、陸上生活をしていた可能性が高いようです。

映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の最新予告にも、ケツァルコアトルスらしき巨大な翼竜の姿が見えます。

現実には空を飛ぶことは難しかった可能性が示されてしまいましたが、やはり私たちの気持ちの中では巨大な翼竜が雄大に空を飛んでいたことを期待してしまいます。

劇中のケツァルコアトルスは大胆に空を飛んでいるようなので、本作はそんな夢に満ちた巨大翼竜の飛行シーンを楽しめる貴重な機会となるでしょう。

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