アジアゾウの母親は死んだわが子を数週間も運び続ける
アジアゾウの母親は死んだわが子を数週間も運び続ける / Credit: canva
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「死んだわが子」を数週間にわたり運び続けるアジアゾウの母親

2022.05.24 Tuesday

Asian elephant mom carries dead calf for weeks, new eye-opening videos reveal https://www.livescience.com/asian-elephants-mourn-dead Asian Elephant Moms Grieve Over Their Babies’ Death By Carrying Dead Calf in Their Trunks for Weeks https://www.sciencetimes.com/articles/37798/20220522/asian-elephant-moms-grieve-over-babies-death-carrying-dead-calf.htm
Viewing the rare through public lenses: insights into dead calf carrying and other thanatological responses in Asian elephants using YouTube videos https://royalsocietypublishing.org/doi/full/10.1098/rsos.211740

アジアゾウ(Elephas maximus)は社会的な動物であり、母と子の絆が強いことで有名です。

そしてこのほど、インド理科大学院(IISc)の研究により、アジアゾウの母親は、死んだわが子を数日〜数週間にわたり、鼻で担いで持ち運ぶことが判明しました。

これはアジアゾウが、私たちと同じように「死」に対して何らかの感情的反応を経験している証拠となります。

また今回の研究は、YouTubeに投稿されている動画を調査対象とした点でもユニークです。

研究の詳細は、2022年5月18日付で科学雑誌『Royal Society Open Science』に掲載されています。

YouTubeに公開されている動画から判明

アフリカのサバンナに住む「アフリカゾウ(Loxodonta africana)」では、以前から、群れの一頭が死ぬと何らかの感情的反応を示すことが知られていました

遺体に近づいて鼻で触ったり、脚で転がしたり、近くに立って見張りをするなどが、代表的な反応です。

しかし、これらの行動は、森林地帯に分布するアジアゾウではあまり知られていません

景観の開けたサバンナとは違い、密林の中のゾウを観察するのが困難だからです。

そこで研究チームは、一般の方やアマチュアの観察家がYouTubeに投稿した動画に注目しました。

「アジアゾウ」と「死」に関するキーワードで検索したところ、2010年から2021年の間に合計39本、アジアゾウが仲間を亡くしたときの反応を撮影した動画が見つかっています

動画の80%は野生のゾウ、16%は飼育のゾウ、4%は半飼育のゾウ(木材産業や観光公園で働くゾウ)です。

そのうち12本は子どもが亡くなったときの映像で、さらにその中の5本は、母親のゾウが鼻で死んだわが子を抱きかかえ運んでいました。

遺体の腐敗具合から、死後数日〜数週間経っていることが特定されています。

動画に見られた母親以外のゾウは、一般に、死体に近づくと落ち着かない、警戒する、触覚や匂いで調べるなどの反応を示していました。

また、遺体をなでたり、揺すったり、持ち上げたりして、まるで死んだ仲間を蘇らせようとする動きも見せています。

こうした行動は、動物園でもよく見られる社会的な反応だそうです。

一方で、死んだわが子を何日間も運び続ける行動は、母親のゾウにのみ観察されました。

これについて、研究チームは「ゾウの母親は、子どもが自分で採餌と自衛ができるようになるまで育てるので、母子の結びつきが強くなる」と指摘。

「この長期にわたる絆の形成のため、母親は死んで動かなくなった子どもに対して、強く反応するのでしょう」と説明します。

(a) 死んだ子に対する母親の反応、(b)仲間の死に対する反応
(a) 死んだ子に対する母親の反応、(b)仲間の死に対する反応 / Credit: Sanjeeta Sharma Pokharel et al., Royal Society Open Science(2022)

わが子の死を悼む動物は、ヒトやゾウだけではありません。

2018年には、米ワシントン州沖で、メスのシャチが、死んだ赤ん坊を17日間抱きかかえる様子が報告されています。

また2020年には、アフリカのナミビア砂漠で、ヒヒの母親が、子どもの亡骸を10日間にわたって持ち歩く姿が観察されました。

ヒヒの母親は「子どもの死体」を10日間持ち歩くことがわかる

やはり、哺乳類における母子の絆は、生物界でもとびぬけて強いようです。

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