1世紀以上も正体不明だった生物の系統を特定
1世紀以上も正体不明だった生物の系統を特定 / Credit: Tatsuya Hirasawa et al., Nature(2022)
paleontology

130年も正体不明だった4億年前の生物、人間を含む「四肢動物の始祖」だったと判明!

2022.05.28 Saturday

デボン紀中期(約4億年前)の地層から、1世紀以上の前に発見されていた正体不明の生物「パレオスポンディルス(Palaeospondylus gunni)」

これが理化学研究所(理研)の新たな調査により、四肢動物の系統に属することが解明されました。

それも、魚のヒレから陸上脊椎動物の四肢への移行期を埋める「ミッシングリンク」と見られます。

すなわち、人類の最も古い祖先のひとつと考えられるようです。

研究の詳細は、2022年5月25日付で科学雑誌『Nature』に掲載されました。

Scientists Think This Strange Fish-Like Creature May Be One of Our Ancient Ancestors https://www.sciencealert.com/this-fish-like-creature-could-be-one-of-your-oldest-known-ancestors 4億年前の謎の脊椎動物の正体解明-シンクロトロン放射光X線マイクロCTによる化石の精密観察-(理研) https://www.riken.jp/press/2022/20220526_1/
Morphology of Palaeospondylus shows affinity to tetrapod ancestors https://www.nature.com/articles/s41586-022-04781-3

1世紀以上もつかめなかった正体

パレオスポンディルス(学名:Palaeospondylus gunni、「古代の背骨」の意)は、英スコットランドにあるデボン紀中期(約4億年前)の地層から産出する化石として知られています。

最初に報告されたのは1890年で、これまでに約2000点見つかっていますが、脊椎動物のどのグループに属するのかは不明でした。

見た目は全長5センチほどの魚型をしており、分類の鍵となる頭骨(形態的特徴が集まっている)の長さは5~6ミリしかありません。

さらに、彼らには歯や頭部表面を覆う皮骨がなく、胸ビレや腹ビレの痕跡も見られません。(ヌタウナギやヤツメウナギなど、アゴを持たないグループの円口類に近い特徴)

その一方で、名前の通り、背骨がよく発達しています。(アゴを持つ脊椎動物の中の後から進化したグループに近い特徴)

この「キメラ的」特徴ゆえに、パレオスポンディルスをどの系統に位置付ければいいのか、これまで見当がつかなかったのです。

研究に用いた化石標本(左)とシンクロトロン放射光X線マイクロCT(右)
研究に用いた化石標本(左)とシンクロトロン放射光X線マイクロCT(右) / Credit: 理研 – 4億年前の謎の脊椎動物の正体解明(2022)

また、パレオスポンディルスの化石は、見つかった時点で骨格が破損しているケースがほとんどで、正確な観察が困難でした。

そこで研究チームは、約2000点の化石の中から、頭骨が完全に岩石中に保存されたものを探し、それに該当する化石を2点見つけることに成功。

この希少な化石をシンクロトロン放射光X線マイクロCT(SRXμCT)を用いて、高分解能・高コントラストの断層像を撮影しました。

次ページパレオスポンディルスの系統位置がついに判明!

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