史上最大の単一植物群を発見!
史上最大の単一植物群を発見! / Credit: UWA – Largest known plant on earth discovered at Shark Bay and it’s 4,500 years old(2022)
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山手線の3倍!? 「世界最大の植物」をオーストラリア沿岸で発見! (2/2)

2022.06.02 Thursday

前ページ4500年前に出現し、勢力を拡大していた

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「地下茎」によりクローン増殖

P. オーストラリスの分布範囲
P. オーストラリスの分布範囲 / Credit: Jane M. Edgeloe et al., Royal Society B: Biological Sciences (2022)

P. オーストラリスが他の植物と異なる点として、その巨大さ以外に、染色体の数が通常の植物の2倍であることが挙げられます。

これは、専門家が倍数体と呼ぶものです。

ふつう、植物は両親から半分ずつ染色体をもらい、2本対になった「二倍体」の形をとります。

ところが、P. オーストラリスは受け取る染色体の数が2倍、つまり親からすべてのゲノムを受け継ぎ、複製しているのです(=クローン)。

こうした倍数体の植物は繁殖能力を持たない(不稔)であることが多く、そのままにしておくと、有性生殖(オスとメスの交配)なしに、無限に増殖できます。

これは意外と身近な植物にも見られる性質で、代表的なのはジャガイモです。

では彼らはどうやって自らの複製を作っているのでしょうか? その具体的な方法が「地下茎」です。

地中に向かって茎を伸ばすことで、そこから根や芽が出て成長し、新たなクローンが生まれます。

P. オーストラリスは、こうして勢力を拡大していたのです。

P. オーストラリスの「地下茎」による繁殖法
P. オーストラリスの「地下茎」による繁殖法 / Credit: operation posidonia – How to become a Storm Squad Member

同様の例では、米国ユタ州のカロリナポプラなどが知られていて、こちらも根のつながった単一の木が森を形成しているとされています。

一方で、研究チームは「シャーク湾のような厳しい環境で、これほど大規模にクローン増殖できたのは実に驚くべきこと」と指摘します。

通常であれば、有性生殖により遺伝的多様性を豊かにすることが、厳しい環境や気候変動に適応するのに最良の方法です。

クローン増殖は遺伝的多様性に乏しく、環境変化に対してぜい弱になりやすい傾向があります。

実際、2010年と11年の夏に、西オーストラリアの海岸線を厳しい熱波が襲い、同地の生態系を直撃しました。

ところが、P. オーストラリスは、広範囲にわたって被害を受けたにもかかわらず、すぐに回復し始めたのです。

チームはこれについて、「P. オーストラリスは、180平方kmの範囲にわたり、わずかな体細胞の突然変異(子孫に受け継がれない程度の小さな遺伝的変化)を起こすことで、それぞれの場所ごとの環境変化に適応しているのかもしれない」と考えています。

これはまだ仮説の段階であり、チームは今後、この問題の解明に取り組んでいく予定です。

まとめ

海草は嵐の被害から海岸を守り、大量の炭素を蓄え、非常に多様な野生生物の生息地を提供しています。

そのため、海草群の保全や復元は、気候変動の緩和や生態系の維持にとって不可欠です。

P. オーストラリスは、西オーストラリアの海岸線を守る”巨大なバリア”となっているのかもしれません。

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