人間の認知能力を奪っていたのは毒の花と呼ばれる構造だった
人間の認知能力を奪っていたのは毒の花と呼ばれる構造だった / Credit:NYU, COURTESY OF SPRINGER-NATURE PUBLISHING
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脳細胞に咲く「毒の花」がアルツハイマー病の真の原因と判明! (2/3)

2022.06.10 Friday

前ページアミロイドベータの蓄積がはじまる前に何かが起きていた

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脳細胞に咲く「毒の花」はアミロイドベータを蓄積させる

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Credit:オートファジー—細胞はなぜ自分を食べるのか

花の正体はいったい何なのか?

謎を解明するため研究者たちは早速、マウスの脳細胞に咲く花の調査にとりかかりました。

すると花は老廃物を大量に溜め込んだ細胞の「ゴミ回収車(オートファゴソーム)」であることが判明します。

通常、ゴミ回収車(オートファゴソーム)が老廃物をある程度まで溜め込むと、内部に酸性液を含む分解屋(リソソーム)と結合して、内部の老廃物の分解処理が行われます。

しかしアルツハイマー病のマウスたちの場合、分解屋(リソソーム)内部の酸性度が低下しており、何個結合してもゴミ収集車(オートファゴソーム)内部の老廃物の分解ができなくなっていました。

花のようにみえる構造は、ゴミ回収車(オートファゴソーム)に分解屋(リソソーム)が無意味な融合を繰り返して肥大した、巨大な液胞だったのです。

そのため研究者たちは、アルツハイマー病になったマウスたちの脳では、脳細胞のゴミ処理システムが機能しなくなっていると考えました。

細胞のゴミ処理システムが麻痺した場合、細胞は機能不全に陥り、死に至ります。

研究では損傷が酷く死にかけている脳細胞では、巨大な花が核の周りに形成されている様子が示されています。

また肥大化した液胞の内部を調べると、毒性のあるアミロイドベータが徐々に蓄積されていることが判明しました。

つまり花はアミロイドベータの供給源にもなっていたのです。

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Credit:Ju-Hyun Lee et al . Faulty autolysosome acidification in Alzheimer’s disease mouse models induces autophagic build-up of Aβ in neurons, yielding senile plaques(2022) . Nature neuroscience

研究者たちは、この奇妙な構造を「PANTHOS」と名付けています。

これはギリシア語で「花」を意味する「アントス(Anthos)」から作った造語で、「毒のある花」を意味しているようです。

(アントスは特に黄色いセキレイを指すと言われる。「PANTHOS」の読みはパントスになると思われるが、公式な日本語読みはまだ示されていない)

まとめると、アルツハイマー病では脳細胞内部の分解屋(リソソーム)の酸性度の喪失が先行して起こり、酸性度の喪失が「毒の花」を形成させ、最後に「毒の花」がアミロイドベータを蓄積させるという経過を経ていた可能性が示されたのです。

次ページアミロイドベータの蓄積は真の原因ではなく結果に過ぎない

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