天の川銀河の中心「いて座A*」を周回する星の軌道
天の川銀河の中心「いて座A*」を周回する星の軌道 / Credit:ESO/L. Calçada/spaceengine.org
space
8,000 kilometers per second: Star with the shortest orbital period around black hole discovered https://phys.org/news/2022-07-kilometers-star-shortest-orbital-period.html
Observation of S4716—a Star with a 4 yr Orbit around Sgr A* https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ac752f

2022.07.06 Wednesday

秒速8千km! 天の川銀河中心ブラックホールを4年で周回する「スピードスター」を発見!

私たちが暮らす天の川銀河の中心部には、「いて座A*(エースター)」と呼ばれる超大質量ブラックホールが存在します。

このほど、独・ケルン大学(University of Cologne)、チェコ・マサリク大学(Masaryk University)の研究により、このいて座A*をわずか4年で周回する恒星が新たに発見されました。

この星は実に秒速8000kmの速度で宇宙を移動しており、まさしく、”スピードスター”と呼ぶにふさわしい星です。

研究の詳細は、2022年7月5日付で科学雑誌『The Astrophysical Journal』に掲載されています。

ブラックホールをわずか4年で一周する恒星を新発見!

いて座A*は、太陽の約400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール(SMBH)であり、直径は約6000万kmに達するとされます。

これは、おおよそ太陽から水までの距離です。

今年5月に、国際プロジェクト・イベントホライズンテレスコープ(EHT)によって、いて座A*の直接観測に成功したことは記憶に新しいでしょう。

私たちの天の川銀河中心にある超大質量ブラックホール「いて座A*」の撮影に成功! 過去の撮影とは何が違うのか?

そして、このブラックホールの周辺には、星が密集してできた「星団」が存在し、明るさや質量の異なる恒星が100個以上集まっています。

この中で最も有名な恒星の一つである「S2」は、ブラックホールまで約200億km(太陽ー海王星間の4倍以上)に近づく軌道を公転しており、約16年でブラックホールを一周します。

スピードも速く、ブラックホールに最接近するときの速度は、光速の3%に達するという。

一方で、他の星々の動きを見るには、このS2が大きな障壁となっていました。

本研究主任のフロリアン・ペイスカー(Florian Peissker)氏は「S2は、例えるなら、映画館の前の席に座っている大柄な人のようで、その向こうを見えづらくしている」と話します。

それでも、ほんの一瞬ではあるものの、他の恒星の動きを観察できるタイミングがあります。

そこで研究チームは今回、過去20年近くにわたる観測データを改良された方法により分析。

結果、いて座A*をわずか4年で公転する恒星を新たに特定したのです。

この星は「S4716」と命名され、その移動速度は秒速8000kmに達するとのことです。

年月ごとのS2(黄色)とS4716(緑)の位置(×がブラックホール)
年月ごとのS2(黄色)とS4716(緑)の位置(×がブラックホール) / Credit: Florian Peißker et al., The Astrophysical Journal(2022)

S4716を観測した望遠鏡は全部で5台あり、そのうち4台を1つの大型望遠鏡として統合することで、より正確かつ詳細な観測が可能になりました。

S4716は、ブラックホールに100AU(天文単位)まで接近しますが、これは天文学的な基準からすると小さな距離です。

(※ 1AUは、地球から太陽までの距離を表し、1億4959万7870kmに相当します)

ご覧の通り、S4716の公転軌道は、S2のそれより、はるかに小さいことがわかります。

黒十字で示されたものが「いて座A*」の位置
黒十字で示されたものが「いて座A*」の位置 / Credit: Florian Peißker et al., The Astrophysical Journal(2022)

しかし、いくら軌道が小さいといってもその距離は「いて座A*」へ最接近時で100AUです。

太陽系において冥王星の軌道半径が40AUであり、その公転周期が248年であることを考えると、この星のたった4年の公転周期がいかに異常な速度であるかイメージできると思います。

この発見について、ペイスカー氏は「超大質量ブラックホールにこれほど近く、また安定した軌道を高速で移動する星の存在は、まったく予想外のことでした」と話しています。

さらに、今回の発見は、天の川銀河の中心を高速で移動する”恒星軌道の起源と進化”について新たな問題を提起します。

研究チームによると、S4716の短周期でコンパクトな軌道は非常に不可解であり、いかにしてその軌道やスピードに落ち着いたのか、解明していきたいと述べています。

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