核融合炉内部で「幽霊」のようなホイスラー波が発見される

quantum 2018/05/27

Point
・ホイスラー波は稲妻によって生み出され、逆の半球まで届き口笛のような雑音として検出される
・核融合炉から飛び出した高速の電子がホイスラー波を生み出す
・ホイスラー波を逆に利用して、電子の減速への応用を研究

 

通常稲妻によって作られる、幽霊のような「ホイスラー波」。このホイスラー波が、核融合炉を飛び出してきた電子から炉を守れるかもしれません。

ホイスラー波とは、自然界では電離層で見られる、稲妻によって生み出される電磁パルスのことで、南半球で起こった稲妻が、北半球で口笛のような雑音として捕らえられる現象として知られています。

このホイスラー波がトカマク型核融合炉のプラズマの中で発見され、“Physical Review Letters”誌で発表されました。ホイスラー波は高速になった電子を拡散・妨害できるので、トカマク型原子炉内から逃げ出した電子によって炉がダメージを受けるのを防ぐ新たな方法を生み出すことができるはずです。

 

核融合力

核融合は、物質同士が融合して一つになるときに、失われた質量分だけエネルギーが生み出される現象で、太陽や星が輝くのはこのエネルギーのおかげです。核融合発電はまだ開発段階ですが、実現すると原理的に多くのエネルギー問題を解決できるため未来のエネルギーとしてずっと注目されてきました。トカマク型核融合炉の中ではドーナツ状に浮遊したプラズマの中を電子が高速で飛び回っています。普通高速に動く物体は周りとの摩擦が増えて減速するような力が働きます。しかし、プラズマ内では減速に働く力は物体が高速に動くほど弱まるのです。そのため、電子が光速まで達し、制御できずに飛び出してしまい、炉にダメージを与えることが問題になっています。

減速の方法はいろいろありますが、ホイスラー波は逃げ出した電子の手綱を握る、別の方法をもたらすことが出来ます。「理想的には中断や逃走を抑えたいと思っていますが、もし起こってしまった場合には、処理するために使える複数の方法があればいいと思います」と、テネシー州のオークリッジ国立研究所のドン・スポングは言います。

 

逃走を止める

スポングのチームは、サンディエゴにあるトカマク型のDIII-D核融合炉で初めて、ホイスラー波が飛び出した電子によって生み出されるのを発見しました。スポングの説明によると、プラズマは多くの振動様式を持つ一塊のゼリーみたいなものです。もし逃走した電子が最適な速度まで上がると、その振動の1つを刺激し、ホイスラー波のトリガーとなります。ちょうど車のダッシュボードがある速度で振動しだすのと同じです。

「私達がやりたいのはこの過程をリバースエンジニアリングして、この波をプラズマの外に出して逃走した電子を散らすことです」とスポングは言います。逃走した電子がどの様にホイスラー波を生み出すのか良く理解することで、この過程を逆転させ、ホイスラー波を出すアンテナを外部に置くことで、電子を散らしたり速くなりすぎることを抑えることを望んでいるのです。

地上に太陽を生み出す核融合炉。そのクリーンなエネルギー実現のための開発は様々な工夫によってなされています。今回の研究が核融合炉の実現を一歩でも近づけるものとなることを期待しましょう。

 

人間の脳、実は量子コンピューターだった? 科学者が本気で実験を開始

 

via: Space.com/ translated & text by SENPAI

 

関連記事

説明不可能。宇宙で一番速く成長する謎の巨大ブラックホールを発見

SHARE

TAG

quantumの関連記事

RELATED ARTICLE