世界最速の瞬間湯沸器、わずか0.000 000 000 000 075秒で100,000℃を達成

science_technology 2018/05/30

Point
・水の温度を75フェムト秒で10万℃に上げる方法を開発
・X線によって水分子の電子が分離してプラズマ化し、さらに温度を上げる
・時間が短いためプラズマ化しているにもかかわらず液体の水と同じ密度をとる

 

一瞬でカップラーメンが食べられる…?

最先端の技術によって、世界最速の湯沸かし器が開発されました。そのパワーは、なんとわずか75フェムト秒(1フェムト=10-15、ピコ秒10分の1)で、室温の水を100,000℃まで熱してしまうほど。それもそのはず、従来の方法とは異なった仕組みで加熱されているのです。

ドイツ電子シンクロトロン(DESY)自由電子レーザー科学センター、スウェーデンのウプサラ大学などの研究チームは、強力なX線ビームによって水分子のもっている電子を外に弾き出し、温度を急激に上げることに成功しました。論文は14日付で「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載されています。

Ultrafast nonthermal heating of water initiated by an X-ray Free-Electron Laser
http://www.pnas.org/content/early/2018/05/09/1711220115
Credit: DESY / 水分子は、実験の約69フェムト秒にはすでに酸素(赤)と水素(白)に分離しています。

 

通常のヒーターと電子レンジの加熱方法

ストーブとオーブンは通常利用される伝統的な温め方法です。数千年の間、ある物体から他の物体へと単純に熱を移動させることで、人々は物を温めてきました。

私たちが日々使う電子レンジは、マイクロ波放射を使い、水分子を激しく動かして温めています。マイクロ波は、電磁波放射の形態のひとつ。電磁波はラジオやテレビ、携帯電話などでも使われています。危険そうな名前ではありますが、マイクロ波はイオン化を伴いません。つまり、原子から電子を剥ぎ取る能力がないということです。

電子レンジの内部では、マイクロ波の波長は水分子に吸収される周波数で放射されています。各個の分子はマイクロ波を吸収し、振動を始めます。受け取ったエネルギーは振動する分子の周りの分子を通して吸収されます。そのエネルギーは、対象の隅々に行き渡り、そして全体の温度が上がるのです。

 

世界最速瞬間湯沸器の仕組み

今回の最速湯沸器システムは、一見従来のマイクロ波の方法と似通った仕組みです。まず、電磁波(この場合はX線)が水の本体に照射されると、そのエネルギーは速やかに水分子に吸収されます。しかし、ここからが違います。通常の方法だと、分子がただ強く揺さぶられるだけです。

X線によって温度が速やかに上昇すると、分子中の電子は原子核が保持できないほど励起します。そうなると、電子は原子から弾き出され、プラスに荷電した1対の水素と酸素の粒子が残ります。この過程は水の中でランダムに繰り返され、プラス電荷の急激な増加が起こります。高熱の水の中のプラス電荷はお互いに激しく反発しあい、それぞれを逆方向に押し出します。その結果、開放された巨大なエネルギーが熱となるのです。

そして75フェムト秒(0.000 000 000 000 075秒)以内に、水は液体からプラズマに変わります。プラズマとは、原子から電子が引き離され、電荷を帯びた気体的な状態のことです。しかし、その変化が急速すぎるため、通常の加熱法のように蒸気へと沸騰するチャンスがありません。つまり、プラズマでありながら密度は液体の水のままなのです。その特徴は太陽や木星のガスのプラズマに似ていますが、密度は低く、同時に地球の核よりも熱いのです。

 

「水への理解」の重要性

研究者たちは、水が周囲の環境とどの様に相互作用するのか、より理解することを望んでいます。研究としてはニッチな領域ですが、水は、私たちが存在する上で不可欠な物質の基礎となる部分です。どのような情報であっても、非常に貴重であることに変わりはありません。

「水は本当に奇妙な液体です。もし、その独特な特徴がなかったとすれば、地上の多くの物は、現在私達が見ているもの、特に生命とは、別物となっているでしょう」とウプサラ大学のOlof Jönsson氏は述べています。

 

なぜ「水」だけが特別なふるまいをするのか、その理由が解明される

 

via:Interesting Engineering/ translated & text by SENPAI

 

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