個々の細胞は予想以上に賢かった
個々の細胞は予想以上に賢かった / Credit:Canva
biology

「単細胞」は想像以上に複雑な自律判断ができる賢い存在だったことが判明!

2022.07.21 Thursday

「あいつは本当に単細胞だよな」と馬鹿にする表現があるように、「脳も無い単体の細胞 = 単純で賢くない」というイメージが定着しています。

ところが、スイス・チューリッヒ大学(University of Zurich)分子生命科学科に所属するルーカス・ペークマンス氏ら研究チームは、細胞1つ1つには複数の情報を自律的に処理・判断する能力があると発表しました。

1つの細胞は私たちが考えていたよりもはるかに賢く、優れた存在だったようです。

研究の詳細は、2022年7月14日付の科学誌『Science』に掲載されました。

Individual Cells Are Smarter Than Thought https://www.news.uzh.ch/en/articles/media/2022/Cell-Decision-Making.html
Multimodal perception links cellular state to decision making in single cells https://www.science.org/doi/10.1126/science.abf4062

人間は複数の情報を得て、より正確な判断を下している

人間は同時に複数の情報を取り入れることで、より正確な判断が可能になります。

例えば、食事という1つの場面でさえ、人間は味覚だけでなく視覚や嗅覚から得られる情報も頼りにします。

人間は視覚や味覚、嗅覚などのさまざまな情報を元に総合的な判断を下す
人間は視覚や味覚、嗅覚などのさまざまな情報を元に総合的な判断を下す / Credit:Canva

ステーキを焼いて食べるとき、単純に「美味しいステーキ」と評価するのではなく、「塩コショウとニンニクが効いたレアなステーキ」と評価するのです。

場合よっては、触感や色、香りから「もう少し焼いた方がいい」とか「鮮度が悪い」という結論に発展することもあるでしょう。

こうしたマルチな情報処理能力はAIにも求められるようになっています。

例えば従来の監視AIは、映像だけを頼りに要注意人物を見つけていました。

対象者の動きから、その人が「暴走している」とか「破壊行為をしている」などと判断していたのです。

複数の情報を処理・判断する「高度な能力」はAIにも求められている
複数の情報を処理・判断する「高度な能力」はAIにも求められている / Credit:Canva

しかし最近では技術の進展により、さらに幅広く正確な判断ができるAIが求められています。

映像だけであれば、「何もしていない人」でも、音声情報も含めて判断することで、「叫んでいる・騒音を引き起こしている人」として、要注意人物を発見できるのです。

このように「複数の情報を取り入れて、自律的に処理・判断する能力」は、生物が本来もっている非常に高度で複雑な能力の1つです。

これを再現するのはAIでも簡単ではありません。

しかしペークマンス氏らの研究によって、私たちを構成する細胞の1つ1つが同様の能力をもっていると判明しました。

次ページ個々の細胞には「複数の情報から自律的に判断する能力」がある

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