マウスのがんをわずか数日で根絶する「ビーズ」が凄い
マウスのがんをわずか数日で根絶する「ビーズ」が凄い / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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2022.09.13 Tuesday

マウスのがんをわずか数日で根絶する「ビーズ」 (2/3)

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「チクり魔」を「本物のワル」の周りに縛って働かせてみたら優秀だった

実験に使われたビーズ。1個の中に数万個のサイトカインを分泌される細胞がつめられる
実験に使われたビーズ。1個の中に数万個のサイトカインを分泌される細胞がつめられる / Credit:Rice University

きっかけとなったのは、卵巣がん患者を対象とした臨床試験でした。

この試験ではサイトカイン(IL-2)を血管に注射するのではなく、内臓を覆う腹膜に注射することで、サイトカイン(IL-2)が働く場所を限定する試みがなされました。

すると試験に参加した女性患者の一部で完全に腫瘍が消滅していたことが判明します。

ただ残念なことに使用されたサイトカイン(IL-2)の濃度が非常に高かったため、多くの患者は毒性に耐えきれないことも判明しました。

そこでライス大学の研究者たちは、より限定的な場所で効果的にサイトカイン(IL-2)を放出する手段として、小さなビーズを使った方法を開発することにしました。

ビーズの中にはサイトカイン(IL-2)を生産するように遺伝子操作された数万個の細胞が収められており、腫瘍の近くに打ち込まれるとその場に留まって、持続的にサイトカイン(IL-2)を放出し続けることができます。

つまり、チクり魔の働きを本物のワルである腫瘍の周りだけに限定することが可能になるのです。

そして腫瘍の存在しか免疫にチクらなくなることで、サイトカイン(IL-2)は正常な細胞を傷つけることがなくなり、単なるチクり魔を優秀な警備員へと変化させます。

今回の研究では、このビーズの胸膜中皮腫に対する効果が調べられています。

胸膜中皮腫は主にアスベストが原因で発生するが非常に危険ながんであり、外科的手術も困難であることが知られています。

つまり「手強いがん」の代表の1つでもあるわけです。

実験にあたってはまず、胸膜中皮腫を発症させたマウスたちが用意され、免疫療法(チェックポイント阻害剤)と併用しつつ、腫瘍近くにビーズが撃ち込まれました。

なおビーズの大きさは幅1.5mmほどであり、手術も極めて簡単とのこと。

また分析を行ったところ、ビーズから放出されたサイトカイン(IL-2)は通常の体内に比べて150倍もの局所濃度を腫瘍のまわりに展開する効果があり、腫瘍のまわりの免疫細胞を激烈に活性化させていきました。

結果、驚いたことに、治療を行った全てのマウスたち(7匹中7匹)において、わずか数日という極めて短い期間で、腫瘍が根絶されたことが判明します。

また免疫療法を併用せずビーズのみを使った場合でも、半数のマウスたちで腫瘍が消滅したことが確認されました。

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