疲れや食欲不振など多くの病気に共通する症状を起こす脳回路を発見!
疲れや食欲不振など多くの病気に共通する症状を起こす脳回路を発見! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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Neuronal culprits of sickness behaviours https://www.nature.com/articles/d41586-022-02321-7 Infection Activates Specialized Neurons to Drive Sickness Behaviors https://www.genengnews.com/topics/translational-medicine/infectious-diseases/infection-activates-specialized-neurons-to-drive-sickness-behaviors/
Brainstem ADCYAP1+ neurons control multiple aspects of sickness behaviour https://www.nature.com/articles/s41586-022-05161-7

2022.09.20 Tuesday

「具合の悪さ」を起こす脳回路を発見!

悪寒、発熱、痛み、疲れ、食欲不振、活動の低下などの症状は、どの感染症にかかったときでもおおむね共通してみられます。

しかし、どの感染症にかかっても共通した症状が発生するのは、よくよく考えれば奇妙にも思えてきます。

米国のロックフェラー大学(Rockefeller University)で行われた研究によれば、感染症にかかったときに共通してみられるさまざまな「具合の悪さ」をうみだしている脳回路を発見した、とのこと。

つまりさまざまな病気で共通する「具合が悪い」という状態を引き起こしているのは病原体の破壊活動ではなく、特定の脳回路からの命令だったのです。

また研究では「具合が悪い」状態を引き起こす脳回路を遮断する方法も発見されており、将来的には、あらゆる共通症状を取り去る汎用的な「抗病気薬」が開発できる可能性があるとのこと。

しかし、なぜ私たちの脳はあえて「具合の悪さ」をうみだしていたのでしょうか?

研究内容の詳細は2022年9月7日に『Nature』にて掲載されています。

疲れや食欲不振など多くの病気に共通する症状を起こす脳回路を発見!

疲れや食欲不振など多くの病気に共通する症状を起こす脳回路を発見!
疲れや食欲不振など多くの病気に共通する症状を起こす脳回路を発見! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

インフルエンザや新型コロナウイルスをはじめ、世の中には私たちの健康を脅かす様々な感染症が存在しています。

しかし不思議なことに、どの感染症にかかった場合でも悪寒、発熱、痛み、疲れ、食欲不振、活動の低下など、いくつかの共通する症状が体に現れます。

これまでの研究により、これら共通症状はあえて具合を悪くすることで体を動かないようにさせ、エネルギーを病気との闘いに集中させるための防衛反応であることが判明しています。

(※またこれら防衛反応は、主にによって制御されているのではないかと考えられていました)

しかし、具体的にどのようなメカニズムによって共通症状(具合が悪い状態)が引き起こされているかは、大きな謎となっていました。

そこで今回、ロックフェラー大学の研究者たちは、細菌の体の一部を模倣するLPS(リポ多糖類)をマウスの体に注射して偽感染を起こすことで、共通反応の源泉を特定することにしました。

LPSが注射されたマウスの体は感染症にかかったと勘違い、食欲不振や活動低下などの共通症状のいくつかを発症させます。

研究者たちはこのときのマウスの脳を調べ、どの領域が最も強く反応するかを調べました。

結果、延髄にある孤束核(NTS)と延髄最後野(AP)と呼ばれる2カ所の脳領域において、急速な活動増加が観察されます。

調べるべき領域が特定されると、次に研究者たちはそれそれの領域においてLPSを注射したときだけに反応するニューロンを探しました。

すると8種類のニューロン集団がLPSによる偽感染に反応していると判明。

その中でも特に、孤束核に存在するAdcyap1と呼ばれる神経ペプチドを発現している神経細胞が共通症状の発生において重要であることが判明します。

実際、研究者たちがAdcyap1ニューロンの活動を阻害すると、LPSを注射しても食欲不振や運動性の低下を引き起こさないことが判明。

この結果は、共通症状をうみだすのに中心的な脳回路を遮断することで、病気になっても共通症状のいくつかを起こさずに済ませられることを示します。

一方、逆にAdcyap1ニューロンを強制的に活性化させるとLPSを注射していなくてもマウスたちは感染したと勘違いを起こし、食欲不振や運動性の低下を起こすようになりました。

つまりこの脳回路を活性化すると、病気になっていなくても病気の共通症状を発症してしまうのです。

次ページ共通症状の元となる脳回路を遮断する薬は汎用的な「抗病気薬」になる

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