地球の動物は数認識で「種を超えた共通の精神構造」を持っている
地球の動物は数認識で「種を超えた共通の精神構造」を持っている / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
brain
Honeybees order numbers from left to right, a study claims https://www.sciencenews.org/article/honeybee-mental-number-line-order-left-right
An insect brain organizes numbers on a left-to-right mental number line https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2203584119

2022.10.23 Sunday

地球の動物は数認識で「種を超えた共通の精神構造」を持っている

少し深淵な話になります。

『急進的な少数派に左派、保守的な多数派に右派』

『序列番号が小さく偉いのが左大臣、それに続くのが右大臣』

不思議なことに私たちの精神は「小さい数」を左に配置し「大きい数」を右に配置する傾向ががあることが、近年の研究によって明らかになってきました。

さまざまな文化に属する人々に数字を並べてもらう試験を行っても、左から右に向かって『1・2・3・4・5・6・7・8・9……』と小さい数から大きい数が並べられる場合が多くなっています。

単に西洋文化の影響じゃないかと思う人もいるかもしれませんが、違います。

最新の研究では、この左から右へ向けた傾向は文化を学ぶ前の人間の赤ちゃんにも存在しており、さらにサルやニワトリなど人類以外の数を認識できる動物にも存在することが報告されています。

左から右に向けた数直線(すうちょくせん)は、さまざまな脊椎動物に共通する「種を超えた精神構造」となっているのです。

なかなかに信じがたい話ですが、種を超えた共通の心の骨組みのようなものが存在する、という考えは非常に興味深いものと言えるでしょう。

今回、イタリアのパドヴァ大学(UNIPD)の研究者たちは、この考えをさらに推し進め、無脊椎動物であるミツバチにおいても「小さい数が左で大きい数が右」という精神構造、すなわち「心の数直線」と呼ばれるものが存在するかを調べることにしました。

もしミツバチにも同じ傾向が存在するならば、左から右へ向かう「心の数直線」という精神構造が、脊椎動物と無脊椎動物の共通祖先に遡るほど古い起源を持つ証拠の一端にもなるでしょう。

研究内容の詳細は2022年10月17日に『PNAS』にて公開されました。

ナゾロジーチャンネル動画公開中

太陽までの距離は紀元前に測定されていた! 【必要なのは1本の棒と偉大な頭脳】

異なる種が同じ精神構造を持っているのは「よくある」こと

本格的な研究内容に触れる前に、少しでも「オカルティック」な雰囲気を除去したいと思います。

ここまで読み進めてくれた人の中にも「種を超えた精神構造」といった、いかにもなフレーズに怪しさを感じている人は多いでしょう。

ですが少し視野を広げれば、実はあたりまえな話でもあるのです。

たとえば私たち人間は、、鳥や魚など、他の種族の恐怖や怒りを「認識」することが可能です。

これは恐怖や怒りなどの原始的感情が「種を超えた精神構造」であるためと言えるでしょう。

私たち人間は高度な知能を持っていますが、基礎となる恐怖や怒りなどの精神構造は他種族と共有しているのです。

では「種を超えた精神構造」は怒りや恐怖といった感情に限定されるものなのでしょうか?

もし限定されないのならば、人間の行動・精神・文化の中にしばしば散見される「偏り」のいくつかも、種を超えた精神構造が根底に存在する可能性があるはずです。

そのため近年では「人間だけのもの」と思われてきたさまざまな概念が他の動物の精神構造にも存在するかどうかが確かめられるようになってきました。

なかでも特に、心の数直線(すうちょくせん)は盛んな議論の対象となっています。

地球の動物は数認識で「種を超えた共通の精神構造」を持っている
地球の動物は数認識で「種を超えた共通の精神構造」を持っている / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

私たち人間は統計的にみれば、小さい数を左側、大きい数値を右側に関連付ける傾向があることが知られています。

心の数直線を巡る議論では、この「人間だけのもの」と考えられてきた精神構造(心の数直線)が、他の動物種にも存在するかどうかが問題になっています。

この考えが提唱されはじめたころは、相当に叩かれました。

『人間の習慣は文化によって支配されるものである』

『アラビア語など右から数字を書いていく文化などあてはまらないものもある』

などなど社会科学者・哲学者・宗教家そして科学者も含む各方面から集中砲火に晒されていました。

しかし研究が進むにつれ、心の数直線が文化を学ぶ前の人間の赤ちゃんだけでなく、サル、ニワトリなど数を認識できる他種族にも存在していることが明らかになってきました。

この結果は、小さい数を左側、大きい数を右側とする心の数直線が文化や学習によらない先天的な精神構造にある可能性を示しています。

しかし数を認識できる動物は脊椎動物だけではありません。

近年の研究では、無脊椎動物であるミツバチにも数を認識し「0」の概念を構築できることがわかってきました。

そこで今回、パドヴァ大学の研究者たちは、ミツバチにも人間やサルやニワトリと同じように、小さい数を左側、大きい数を右側に関連付ける精神構造(心の数直線)があるかどうかを確かめることにしました。

もしミツバチのシンプルな脳にも人間と同じ心の数直線がプレインストールされているならば、地球に生きる動物たちの心は思っていたよりもずっと同質であると言えるでしょう。

しかし、研究者たちはいったいどんな方法でミツバチの心の数直線を調べたのでしょうか?

意外にも、その方法は極めてシンプルでした。

次ページミツバチの「心の数直線」

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

脳科学のニュースbrain news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!