北海道の天然記念物「ヒブナ」の起源を解明!
北海道の天然記念物「ヒブナ」の起源を解明! / Credit: 京都大学 / 天然記念物ヒブナの起源を解明―クローン繁殖のはずなのにキンギョと交雑―(2022)
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天然記念物「ヒブナ」の起源を解明!クローン繁殖種なのにキンギョと交雑していた

2022.10.30 Sunday

フナは、日本でも馴染み深い淡水魚であり、一般に、光沢ある黒や褐色の体をしています。

一方、北海道には緋色の体をもつ天然記念物「ヒブナ」が存在しており、特に、釧路市にある春採(はるとり)湖は「ヒブナの生息地」として有名です。

しかし、本来は黒か褐色であるはずのフナが、いつ、どのようにして緋色を手に入れたのかは不明でした。

そこで、京都大学、釧路市立博物館、美幌(びほろ)博物館の共同研究チームは、ヒブナの起源を解明すべく、調査を開始。

その結果、北海道のヒブナは、100年ほど前に大量放流されたキンギョが、同地のフナと交雑して誕生したことが明らかになりました。

ただ、不思議なのはこの種がクローン繁殖する3倍体であるという点です。

研究の詳細は、2022年10月21日付で科学雑誌『PLOS ONE』に掲載されています。

天然記念物ヒブナの起源を解明―クローン繁殖のはずなのにキンギョと交雑― https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2022-10-21
Origin of scarlet gynogenetic triploid Carassius fish: Implications for conservation of the sexual–gynogenetic complex https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0276390

北海道のヒブナの起源はどこにある?

野生のフナには、「オスとメスの交尾で繁殖する2倍体」「メスのみでクローン繁殖する3倍体」、そして「出現頻度が低くナゾに満ちた4倍体」の存在が確認されています。

(2倍体とは、両親それぞれから1セットずつゲノムを受け継いだ場合を指す。3倍体なら3セットのゲノムを、4倍体なら4セットのゲノムをもつ)

クローンフナ(3倍体)は、日本の河川や湖沼に広く見られ、「雌性発生」という特殊なクローン繁殖をします。

雌性発生ではまず、クローンフナが減数分裂をしない卵をつくり、発生のために通常のフナ(2倍体のオス)の精子を必要とします。

しかし、オスの精子は、単に卵の発生を刺激するだけで、遺伝的には関与しないので、生まれた子はすべて、メスのクローンフナとなるのです。

「雌性発生」の流れ
「雌性発生」の流れ / Credit: 京都大学 / 天然記念物ヒブナの起源を解明―クローン繁殖のはずなのにキンギョと交雑―(2022)

一方、これまでの調査で、北海道の「ヒブナ」にも、クローン繁殖をする3倍体が含まれることがわかっています。

北海道のヒブナは、その起源がよくわかっていませんが、最も有力なのは「キンギョとの交雑説」です。

というのも、「ヒブナの生息地」として有名な春採湖では、1916年に約3000匹のキンギョが放流され、その後、1922年からヒブナが目撃されるようになっているからです。

しかし、クローンフナ(3倍体)は、クローン繁殖をして、キンギョと交雑できないはずなので、この説は今まで受け入れられませんでした。

3倍体のヒブナ(撮影:町田善康)
3倍体のヒブナ(撮影:町田善康) / Credit: 京都大学 / 天然記念物ヒブナの起源を解明―クローン繁殖のはずなのにキンギョと交雑―(2022)

ところが近年になって、「クローン個体は交雑できない」という前提が覆されました。

調査の結果、クローンフナ(3倍体)が、一緒に共存している有性フナ(2倍体)と稀に交雑して、有性オスのDNAを取り入れている証拠が得られたのです。

そこで研究チームは、ヒブナの起源について、新たに遺伝子分析を行うことにしました。

次ページヒブナは「クローンフナ」と「キンギョ」の交雑種だった

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