犬と飼い主は似ている
犬と飼い主は似ている / Credit:Canva
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「犬は飼い主に似る」は本当なのか?

2023.02.26 Sunday

よく「犬は飼い主に似る」と言われます。

これは犬を飼っている人や、飼っている人と交流のある人には心当たりのある考えかもしれません。

しかし、それは事実なのでしょうか? 事実だとしたらそこにはなにか理由があるのでしょうか?

ドイツのフリードリヒ・シラー大学イェーナ(FSU)一般心理・認知神経科学科に所属するヤナ・ベンダー氏ら研究チームは、「イヌと飼い主が良い関係でいるための秘訣」を探るため、29の研究を分析しました。

その結果、犬には飼い主の性格に追従する部分が確かにあり、最高のパートナーになる秘訣はこそがポジティブな部分で「イヌと飼い主が似ている」ことだったと報告しています。

研究の詳細は、2023年2月15日付の科学誌『Applied Animal Behaviour Science』に掲載されています。

Like owner, like dog! You and your pooch probably have the same personality, study claims https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-11748725/Like-owner-like-dog-pooch-probably-personality-study-claims.html
What makes a good dog-owner team? – A systematic review about compatibility in personality and attachment https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168159123000291?via%3Dihub

最高のパートナーになる秘訣は「長所が似ている」ことだった

ネットでペットのかわいらしい動画を見たり、ペットショップの近くを通ったりすると、「イヌを飼いたい」という気持ちが強くなるかもしれません。

実際、そのように感じてイヌを飼育し始める人が増えました。

しかし最近では、飼育していたイヌを捨てたり手放したりする人も増えています。

これには新型コロナウイルスのパンデミック中に飼い始めたものの、結局長続きしなかった人が多いことも関係しているようです。

イヌの飼育放棄が増えている
イヌの飼育放棄が増えている / Credit:Canva

それら元飼い主は、経済的な理由や時間が足りないことを手放す動機として挙げています。

しかしそれだけではありません。

多くの元飼い主は、「イヌの問題行動が原因で飼育できなくなった」と述べているのです。

責任逃れの言い訳にも聞こえますが、全くの作り話というわけでもないのでしょう。

「イヌ」と「飼い主」がうまくかみ合わず、結果として飼育放棄につながった可能性はあります。

もし飼い主がイヌを購入したり貰ったりする前に自分との相性を見定めることができるなら、お互いパートナーに満足し、飼育放棄も減るでしょう。

そこでベンダー氏ら研究チームは、イヌと飼い主の関係がうまく機能する要因を探そうと考えました。

最高のパートナーになるための秘訣は?
最高のパートナーになるための秘訣は? / Credit:Canva

これまでに行われてきた29の研究を分析し、イヌと飼い主それぞれの性格と関連性を調査したのです。

その結果、最も強い絆で結ばれている飼い主とイヌは、ポジティブな性格特性が似ていると分かりました。

お互いに温厚で協調性があり、愛が深く、外で走ることが好きだったりすると、イヌと飼い主の関係はうまく機能するのです。

そのような関係の下で成長するイヌは、トレーニングに快く応じ、物を破壊せず、社交的なようです。

「のんびり屋でおとなしいイヌと穏やかで優しい飼い主」や、「いつも前のめりで元気すぎるイヌとポジティブで明るい飼い主」などのパートナーを見かけることがあるでしょう。

彼らが幸せで良い関係を築けているのは、ポジティブな特性が似ているからだったのです。

対照的に、イヌと飼い主の関係性がうまく機能しない要因として、飼い主が分離不安症であることが挙げられました。

分離不安症とは、親族や友人、ペットなどの死をきっかけとして起こり、愛着対象(家族など)が離れることに対して強い不安を抱くようになるというもの。

そして研究チームによると、分離不安症の傾向を持つ飼い主は、同じく分離不安の問題を抱えたイヌを飼育していることが多いようです。

こうした問題を抱えたイヌは、飼い主が自分から離れることを極端に恐れます。

飼い主が少しの時間外出しただけでも不安になり、近所迷惑になるほど吠え続けるのです。

中には体が震えたり吐いたりするほど怯えるイヌもいます。

これも「イヌと飼い主が似ている」ケースですが、ネガティブな性格が似ていることは、良好な関係を築く上でデメリットになるようです。

研究チームは、「飼い主の分離に対する強すぎる心配が、イヌにも影響を与え、同じくネガティブな感情を生み出しているかもしれない」と述べています。

また「飼い主が自分と似たイヌを選んでいる」という側面も大きいでしょう。

飼い主が、自分と同じ辛さを味わっているイヌを見逃せないと感じたり、共依存的な関係を望んだりするからかもしれません。

動機は良いものかもしれませんが、統計的に見ると、良好なパートナーになることは難しいようです。

外見ではなく性格でイヌを選ぶべき。人懐っこく協調性が高いイヌなら相思相愛になりやすい
外見ではなく性格でイヌを選ぶべき。人懐っこく協調性が高いイヌなら相思相愛になりやすい / Credit:Canva

では、イヌを購入したり貰ったりするときに、私たちはどこを重視すべきでしょうか?

研究チームは、「かわいらしさ」や「外見」ではなく、「性格」を重視するよう勧めています。

お互いのポジティブな面に注目してパートナーを決定するようにしましょう。

例えば、事前に家族や友人に尋ね、「温厚」「協力的」「運動が好き」などの特性の中から自分の長所との一致を検証することは可能でしょう

イヌの性格は犬種に大きく左右されるので、自分が温厚なタイプなら、温厚だと言われている犬種(例えば、ゴールデンレトリバーやパグ)から選ぶというのも重要かもしれません。

また「人間が近づいた時の反応」や「他のイヌとどのように触れ合っているか」などからも、その個体の特性が分かります。

とはいえ、短時間でイヌの性格を見分けることは簡単ではありません。

ぜひ、新たに犬を飼うときはペットショップ店員や現在の飼い主に尋ねてみてください。

彼らは一匹一匹をずっと観察してきたので、候補それぞれの性格や長所を教えてくれるでしょう。

このようにして、できるだけ長所が自分と一致すると感じるイヌを選べば、相思相愛になりやすいと言えます。

また自分のネガティブな性格をあまりイヌに見せすぎない方がいいかもしれません。

ネガティブな性格が飼い主に似た場合、それは自分に似ているという感覚よりも、問題行動が多いという印象になりやすく、飼育放棄に繋がる可能性があるのです。

調査によると「イヌが飼い主に似る」は事実であるようです。

そしてそのもっとも重要な点は、ポジティブな性格の一致がイヌと最高のパートナーであり続けるための条件になっているということです。

だからあなたが飼いイヌを見て自分と似ていると感じたなら、それは彼(彼女)と最高の関係を築けていることの証なのでしょう。

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