ブラックホールが暗黒エネルギーの源とする最初の証拠をわかりやすく解説!
ブラックホールが暗黒エネルギーの源とする最初の証拠をわかりやすく解説! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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宇宙を加速膨張させる「暗黒エネルギー」はブラックホール内に溜まっている!? (2/3)

2023.02.25 Saturday

前ページブラックホールに暗黒エネルギーが蓄積されるという最初の観測的証拠が見つかる!

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エサが存在しないのにブラックホールが成長している

飲み込むものがないのになぜブラックホールは成長していたのでしょうか?
飲み込むものがないのになぜブラックホールは成長していたのでしょうか? / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

研究の基礎となる概念は、量子力学において「真空のエネルギー」と呼ばれる存在です。

私たちの住む宇宙には、物質が極めて少ない真空にも莫大なエネルギー(真空のエネルギー)が含まれており、このエネルギーが重力に逆らう圧力を発揮することが知られています。

実際、2020年に行われた研究では、この真空の力(カシミール効果)を利用して、物体を移動・変形させることに成功しています。

「真空の力」を使って物体を動かすことに成功!2つの真空間に働くカシミール効果とは?

そのため現在、真空のエネルギーは暗黒エネルギーの正体の最有力候補と考えられています。

新たな研究では、この「真空のエネルギーが暗黒エネルギーの正体である」とする説をアインシュタインの方程式に組み込んで計算しました。

1966年、ソ連の物理学者エラスト・グライナーは、アインシュタインの方程式によって、真空のエネルギーが凝縮することで、一見するとブラックホールのようにみえる「真空エネルギーの球体」を作り出せることを示しました。

そのため、もし「暗黒エネルギー」=「真空のエネルギー」という公式が成り立つ場合、ブラックホールが持つ質量は、内部の暗黒エネルギー(真空のエネルギー)の量と相関している可能性があります。

そこで今回、1つ目の研究では、楕円銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールに着目しました。

楕円銀河にはブラックホールのエサとなるものがもうほとんど存在しません
楕円銀河にはブラックホールのエサとなるものがもうほとんど存在しません / Credit:NASA

楕円銀河は一般に、複数の銀河が合体してできた古くて巨大な銀河のことです。私たちの天の川銀河やアンドロメダ銀河なども最終的には、この楕円銀河に行き着くと考えられています。

このタイプの銀河は概して非常に不活発であり、新しい星の形成がストップして、星々の間にはほとんどガスが含まれていません。

つまり、ブラックホールにとって新たなエサが存在しない銀河なのです。

研究者たちは複数の楕円銀河を観察することで、中心部の超大質量ブラックホールが過去90億年にわたり、どのように質量が変化してきたかを調べました。

もしブラックホールの成長が物質やエネルギーの吸収に依存している場合、中心部のブラックホールはほとんど質量が変化しないはずです。

しかし分析の結果、中心部のブラックホールは予測されるよりも7倍から20倍の大きさであることが判明します。

つまり、エサがないにもかかわらずブラックホールが成長するという、奇妙な現象が起きていたのです。

そこで研究者たちは次に、この現象の説明を行うための新たな理論の構築を行いました。

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