テロメアからRNAが作られている
![「テロメア」からタンパク質が作られているとする研究結果が発表!](https://nazology.net/wp-content/uploads/2023/03/bb203e383dc123a6bf6ccd831983e458-900x506.jpg)
私たちの体では、日々新たな細胞が生産され、古い細胞が捨てられていきます。
たとえば皮膚の場合、古い細胞は「垢」の形で表面から剥がれ落ちる一方で、皮膚の深い位置では新しい細胞が生産され、剥がれ落ちた細胞の下から次々に顔を出すように現れてきます。
同様の細胞の更新は体の至る所で起きており、動物のフンの15~20%も古くなった腸細胞で占められています。
細胞の更新によって生物は古くなった細胞を処分して、常に新鮮な細胞を維持することが可能になるのです。
しかし残念なことに、細胞が分裂できる回数は有限です。
細胞分裂を行うためにはDNAの複製が必要となりますが、DNAが複製できる回数は、DNAの両端に存在するテロメアの長さによって決まっているからです。
![DNAの複製を行う酵素はDNAに結合しつつ新たなDNA鎖を作っていきます。 しかしDNAの末端になると複製酵素が結合できる足場がなくなってしまい、最末端の複製だけが不完全に終わってしまうからです。 この最末端部分に、生命を維持する設計図情報を入れておくわけにはいきません。 そのため私たちのDNAの末端は多少削られても影響がないように、テロメアと呼ばれる同じ6つの塩基配列「TTAGGG」が繰り返された構造を持っているのです。](https://nazology.net/wp-content/uploads/2023/03/334ddd69221b6fce101d7fb724dddcf6-900x506.jpg)
また以前に行われた研究では、テロメアにはDNAの末端にループ構造を形成することで末端部分を隠し、染色体間のDNA同士の融合をブロックする機能もあることが示されました。
テロメアが短くなっていくと、正常な細胞分裂ができなくなり、最終的に細胞死が引き起こされます。
しかしテロメアの役割はあくまで構造上のものであり、他のDNAの部分のように「生命の設計図(タンパク質の情報)」は含まれていないと考えられていました。
テロメアは単純な塩基配列の繰り返しであり「ここからが設計図」という意味を持つ遺伝暗号の「開始コドン」も含まれていません。
しかし近年になって、テロメアからTERRA(テラ)と名付けられたRNAが作られていることが明らかになりました。
![RNAは生命の設計図たるDNAの部分写しです。 建物の施工でも常に全体が描かれている大元の設計図を参照しないのと同じように、多種多様なタンパク質が作られるときにも、大元の情報源であるDNAではなく、その部分写しであるRNAが使われます。](https://nazology.net/wp-content/uploads/2023/03/9763bd85b8ca5b3e96984960c66c1dbf-900x506.jpg)
TERRA(テラ)はテロメアから作られる繰り返しRNA配列であり、テロメアに結合することでDNAの劣化や隣接するDNA末端との融合を防ぐ働きがあります。
またTERRA(テラ)は真核生物のテロメアに普遍的に存在しており、転写を調節したり老化やがんの進行などにもかかわっていると考えられています。
しかしTERRA(テラ)の正確な機能はまだ不明な部分が多く、TERRA(テラ)からはタンパク質はつくられないと考えられていました。
しかし事態は予想外の発見によって動きます。