動物のはく製模型を用いて「ひっつき虫」の量を調査
動物のはく製模型を用いて「ひっつき虫」の量を調査 / Credit:佐藤華音(東京農工大学)_ひっつき虫は誰が運ぶ?~動物に付着する種子の量に影響する要因の解明~(2023)
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ひっつき虫は自然界では誰にひっついているのか?

2023.04.13 Thursday

子供のころ、茂みの中を走り回ったり草むらを転がったりして「服がひっつき虫だらけになった」という経験をしたかもしれません。

当時の幼い感覚では、「体中に種がくっつくから面白い。でも後で親に怒られるかな」くらいにしか考えていなかったでしょう。

ところが植物のことを学ぶにつれて、ひっつき虫とは「自ら移動できない植物が種子を散布する方法」だったと知ったはずです。

では、これらひっつき虫を実際に広く散布しているのは、どんな動物なのでしょうか?

東京農工大学大学院農学府に所属する佐藤華音氏ら研究チームは、動物のはく製模型を使用して、どの動物がひっつき虫を多く運んでいるのか調査しました。

その結果、体表面に付着するひっつき虫の量は、動物種や季節によって複雑に異なっていると判明しました。

研究の詳細は、2023年4月6日付の科学誌『Acta Oecologica』に掲載されています。

ひっつき虫は誰が運ぶ?~動物に付着する種子の量に影響する要因の解明~ https://www.tuat.ac.jp/outline/disclosure/pressrelease/2023/20230412_01.html
Seed attachment by epizoochory depends on animal fur, body height, and plant phenology https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1146609X23000267

「動物のはく製模型」でひっつき虫の散布方法を調査する

有名なひっつき虫たち。(左)コセンダングサ、(右)チヂミザサ
有名なひっつき虫たち。(左)コセンダングサ、(右)チヂミザサ / Credit:(左)Alpsdake(Wikipedia)_ひっつき虫(右)Dalgial(Wikipedia)_チヂミザサ

「ひっつき虫」とは、動物やヒトに張り付く植物の種子の俗称です。

ひっつきのメカニズムは複数存在し、棘(とげ)や鉤(かぎ)で刺したり引っかけたりするものや、粘液を出して張り付くものがあります。

自ら移動できない植物にとって、ひっつき虫による種子散布は「分布域を広める唯一の機会」だと言えます。

子供の頃、服に張り付いた「ひっつき虫」は、単なるゴミや汚れの付着ではなく、植物たちの高度な生存戦略だったのです。

では自然界において、この生存戦略はどのように機能しているのでしょうか?

これまでの研究では、家畜やシカ類などの一部の動物種に種子が付着しているか確認する程度であり、野生動物による種子の付着散布の実態は国内外でほとんど知られていませんでした。

調査に用いた剥製模型。左からイタチ、タヌキ、ハクビシン、アライグマ、キツネ。
調査に用いた剥製模型。左からイタチ、タヌキ、ハクビシン、アライグマ、キツネ。 / Credit:佐藤華音(東京農工大学)_ひっつき虫は誰が運ぶ?~動物に付着する種子の量に影響する要因の解明~(2023)

そこで佐藤氏ら研究チームは、6種の中型哺乳類アカギツネアナグマアライグマタヌキニホンイタチハクビシン)のはく製模型に車輪を付けて、5つの調査地点(ミュージアムパーク茨城県自然博物館の野外施設にある林の縁)の地面上を移動させました。

そして、それぞれの体表に付着する種子を回収・分析しました。

その際、動物種や季節(植物が生育している10月と枯死した12月)による付着量と付着部位の違いに注目しました。

次ページ付着する「ひっつき虫の量」は動物種や季節によって変化していた

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