「細菌を予防注射」すると脳がストレスに強くなることを発見

biology 2018/06/09

Point
・熱で殺した細菌“Mycobacterium vaccae”をマウスに注射したところ不安性的行動が減少
・同様の実験をラットで行ったところ、抗炎症性のタンパク質の増加やストレス誘因蛋白の減少が見られる
・有益細菌の予防接種は脳の炎症を抑え、不安症などを予防すると考えられる

 

コロラド大学ボールダー校の研究によって、有益細菌の予防接種が長期にわたる脳の抗炎症効果をもたらし、ストレスの及ぼす身体的・行動的な影響から早く立ち直らせることがわかりました。

もし臨床試験でも再現できれば、PTSDや不安症に対するプロバイオティクな新たな予防法、また抑うつの新たな治療法などに結びつく可能性があります。

Immunization with Mycobacterium vaccae induces an anti-inflammatory milieu in the CNS
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S088915911830196X

げっ歯類における実験では、細菌“Mycobacterium vaccae”が脳の環境を抗炎症状態へとシフトさせました。もし人でも同様のことができれば、多くの神経炎症性疾患に対して幅広い影響を持つようになります。

生涯で4人にひとりが罹患するといわれている不安症やPTSDやストレス性の精神疾患。過去の研究で、ストレス性の脳の炎症がこういった疾患のリスクを高めること、そしてその原因の一部が「気分」に影響する神経伝達物質によるものであることが分かっています。また、外傷や病気、外科手術などの強いストレスは脳のある部分を感作させ、僅かなストレスでも炎症反応を引き起こし、気分障害や認知の低下を引き起こすことも示唆されてきました。

今回の研究で、ストレスの効果によるこういった感作をM.vaccaeが防止し、長期に及び脳のストレス防衛形質を生み出すことを発見しました。

以前の研究では、M.vaccaeを熱で殺した物をマウスに注射し、大きくて攻撃的なオスと共に過ごすというストレス環境下で19日間飼育したところ、不安症的行動が抑制され、大腸炎や抹消器官の炎症なども減っていることが明らかにされています。新たな研究では実際にM.vaccaeが脳内でどう作用しているのかが調べられました。

オスのラットに一週間おきに3回細菌を注射すると、8週間後、海馬の抗炎症タンパク質であるインターロイキン4レベルが有意に上昇。海馬は認知機能や不安、恐れなどを調節する脳の部位です。

この免疫ができたラットをストレスとなるものに暴露したところ、脳の炎症に対する感作で重要な役割をしているとされる、ストレス誘因性蛋白HMGB1が減っており、脳の免疫細胞であるグリア細胞を抗炎症状態に保つ受容体であるCD200R1の発現が高まっていました。そして以前の研究で見られたように、ストレスを受けた後の不安症的行動も減っていました。

腸内のプロバイオティクスが認知機能や不安症などの精神機能に関わっていること、また免疫の形成にも腸内細菌が関わっていることが明らかになっています。今回の研究は、神経系の疾患リスクが抗炎症作用で抑えられたわけですが、注目されるのは、有益細菌を直接接種するという方法をとったということです。今後の応用研究で、PTSDや不安症などの精神系の病気の予防、そして新たな治療法が開発されることを期待しましょう。

 

やられたメンタルを治療してくれる寄生虫がみつかる

 

via: Medical Press/ translated & text by SENPAI

 

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