最新ゲノム編集技術「CRISPER-Cas9」により「ガン」のリスクが高まる可能性がある

biology 2018/06/12
Point
・CRISPER-Cas9、通称「クリスパー」によるゲノム編集が、腫瘍の発生を防ぐ「p53遺伝子」の働きにより阻害される
・クリスパーがうまくいくことは「p53遺伝子の機能不全」を示唆しており、それはガンの原因となる細胞の発生リスクの上昇を意味する
・技術的な問題が一つ増えただけで、クリスパー革命が終わったわけではない

CRISPER-Cas9、通称「クリスパー」とは、生物の細胞内においてDNA上の任意の配列を切断することで、遺伝子の編集を可能にする簡単で効率的なゲノム編集技術です。

この、将来有望なクリスパー技術は、医療から農業まで幅広い分野で革命を起こすであろうと期待されています。しかし、そこに大きな壁が立ちはだかりました。クリスパー技術が「がん」を引き起こすリスクを高めてしまうかもしれないのです。

p53 inhibits CRISPR–Cas9 engineering in human pluripotent stem cells
https://www.nature.com/articles/s41591-018-0050-6
CRISPR–Cas9 genome editing induces a p53-mediated DNA damage response
https://www.nature.com/articles/s41591-018-0049-z

DNAに損傷が起こった細胞を殺すことで腫瘍の発生を防ぐ「p53」という遺伝子に焦点を当てて研究は行なわれました。過去の研究では、p53遺伝子が正常に働いてさえいれば、ほとんどのヒトの腫瘍は形成されません。p53遺伝子のことを「ゲノムの守護者」と呼ぶ研究者もいます。

しかし残念なことに、ある種のクリスパーによるゲノム編集に対して、p53遺伝子はなんらかの防御反応を起こします。DNAを切断し、入れ替えるためにクリスパーを使うと、p53遺伝子が働き始め、遺伝子編集された細胞が自壊してしまうのです。それによって、クリスパーによる編集が本質的に無駄になってしまいます。

そして、そこに逆説的な問題があります。クリスパーによる編集がうまくいった場合、それは細胞のp53遺伝子がうまく働かなかったことを意味するかもしれないのです。そして、p53遺伝子の機能不全は、その細胞がガンの前駆細胞になる可能性があることを意味します。

Credit: Hal Gatewood on Unsplash

「損傷したDNAの修復に成功した細胞を選び出すことによって、p53遺伝子の機能を持たない細胞を知らずに選び出している可能性があります」とカロリンスカ研究所のエマ・ハーパニエミ氏は語ります。

つまり、もし遺伝病の遺伝子治療として患者にクリスパーによる移植が行われた場合、そのような細胞はガン細胞を生み出すかもしれません。この事実はクリスパーによる遺伝子治療の安全性を大きく揺るがすものです。

とはいえ、クリスパー革命が終わったと結論付けるのは早計です。今回の研究はまだ、仮の結論を出したに過ぎません。それに、使われたクリスパー技術は「Cas9酵素」を用いたものだけです。他にもCas9と同じ働きをするものは知られており、それら全てでp53遺伝子による妨害があるとは限りません。論文の著者らも、“CRISPER-Cas9” が「危険なもの」と断じているわけではないことを認めています。ただし、この技術を積極的に推進していくことには慎重な態度をとらざるを得ないでしょう。

 

via: Futurism/ translated & text by SENPAI

 

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