「腸」が古代人のGPSとして働いていたという研究

biology 2018/06/14

Point
・腸と脳の繋がりが塞がれたラットは、海馬依存的な記憶が損傷していた
・実際の神経接続や神経細胞成長に関わるマーカーにも影響あり
・腸と脳の繋がりが場所の記憶にとって重要な働きをしている

「食べ物の恨みは恐ろしい」。食に関する記憶は強く残るものです。

“Nature Communications”に掲載された南カリフォルニア大学(USC)の研究によると、食べ物に関する記憶がよく覚えられるのは、腸と脳のつながりが場所の記憶にとって重要な働きをしているからだということが分かりました。

Gut vagal sensory signaling regulates hippocampus function through multi-order pathways
https://www.nature.com/articles/s41467-018-04639-1

人体で最も長い神経である迷走神経は「情報の幹線道路」ともいわれ、脳と様々な消化器官をつないでいます。お腹の生化学的信号を、脳の中で最も原始的な部分、「脳幹」に伝える働きをしています。

今回の研究で、その迷走神経を含む回路に隠された、重大な目的が発見されたかもしれません。どうやら腸と脳をつなぐ「腸脳軸」が記憶の中枢である海馬に直接信号を伝えることで、それをどこで食べたのか思い出しやすくしているというのです。

お腹の本能に従う

空間的認識と食べ物をつなぐ「本能的直感(gut instinct)」は、それこそ狩猟時代から、腸が脳と協力してGoogleマップのナビのような働きをするのに重要な神経生物学的な仕組みだった可能性があります。

例えば、動物が「食べ物」を見つけて食べると迷走神経が活発になり、このGPSが起動してデータが保存されます。そして再び食べ物を得ようと思ったときは、そのとき保存された外部環境を利用することで、有利に食べ物が得られるというわけです。

腸と脳のつながりがないと体内のコンパスが狂う?

今回の研究では、この腸と脳の接続を確かめるためにラットを使用しました。その結果、腸と脳の迷走神経経路が接続していないラットでは、環境情報を思い出せなくなっていることを発見したのです。さらに接続がないときには、海馬に依存する記憶に損傷があることもわかりました。またこれらの記憶損傷は、海馬における有害な神経生物学的効果を伴っていたとのこと。特に経路の切断は、新たな神経接続や新たな神経細胞の成長の鍵となっている、脳内マーカーに影響していました。

科学者たちは、彼らの発見が、さらなる重要な医学的質問を投げかけるかもしれないと述べています。もしかすると、腸と脳の間のシグナルをブロックする肥満手術などの治療法が、記憶に影響を及ぼす可能性があるというのです。

 

次々と明らかになる腸と脳の関係。「第2の脳」といわれる腸に、この先どんな発見が待ち受けているのか注目されます。

 

うんちは腸が「思考」することで促される。第二の脳、腸に関する最新研究

 

via: USC News/ translated & text by SENPAI

 

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