ブラックホールは存在しない? 時空のトンネル「ワームホール」が天体物理学に革命をもたらす可能性

space 2018/06/15

Point
・ブラックホールには事象の地平線があるとされており、量子論と矛盾している
・ワームホールには事象の地平線がないのでこの矛盾がない
・重力波がワームホールの衝突によって起きたとすると、波にエコーが観測されているはずである

2016年、2つのブラックホールの融合による重力波が検出され、宇宙研究の新しい時代が始まりました。

しかし、もしこの時空の波がブラックホールによって生み出されたわけではなく、ほかのエキゾチックな天体によるものだとしたら? ヨーロッパの研究チームが、その代替物として、宇宙の2地点をつなぐ時空のトンネル「ワームホール」を提唱しています。

Echoes of Kerr-like wormholes
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevD.97.024040

ブラックホールが抱える矛盾とワームホール

ワームホールといえばSF世界のものだと思われがちですが、理論上では過去にも様々な説が提示されています。たとえば物理学者コンスタンティノス氏は、暗黒物質の正体が「アクシオン」という仮説上の素粒子だとすれば、活動銀河核の周辺にワームホールが存在する可能性があると主張しています。

暗黒物質の正体といわれる「アクシオン」を検出可能な測定装置が完成

これまで科学者たちはブラックホールの存在について、ブラックホールの衝突が原因とされる重力波などの間接的観察から推測してきました。ただしブラックホールには、ある矛盾が存在しています。

ブラックホールは無限に抜け出せない境界である「事象の地平線(event horizon)」を持ち、いったん吸い込まれたら光ですら脱出できず、どんな情報も破壊されてしまうといわれています。しかし量子論や一般相対性理論では「情報の保存」を保証しており、情報の破壊は起こるはずがないのです。

この矛盾を解決するため、過去にもホーキング博士が提唱する「ブラックホールはやがてエネルギーを放射して蒸発する」とする説などが上がっています。

そして今回の研究で提唱されたのが、観測したとされるブラックホールが、本当は事象の地平線を持たないワームホールといった他のエキゾチック天体(ECOs)だったという可能性なのです。

「ブラックホールは存在しない」

2つの検出器で検知された重力波シグナルの終わり部分は「リングダウン」として知られており、これは2つのブラックホールの衝突の最終段階と一致しています。事象の地平線の存在によって、短期間のうちに完全にそのシグナルは消えてしまうのですが、もし地平線がないとしたら、この振動は完全には消えないはずです。そして代わりに、しばらく井戸の中の音で起きるような一連のエコー(反響)が生み出されると考えられます。

ルーベンカトリック大学のパブロ・ブエノ氏とパブロ・A・カノ氏は、「もしブラックホールの正体がECOだった場合、興味深いことにリングダウンは似たようなものとなるはずです。よって、この2つの天体を区別するには、エコーの存在を突き止める必要があります」と述べています。

この可能性については、理論的にいつくかのグループが調査するとともに、仮の実験的な解析をLIGOのオリジナルデータですでに行っています。しかし、判定はいまだ決定的ではないとのこと。

「LIGOやVirgoのシグナルにおけるエコーの立証が確実な証拠によってなされれば、天文物理学的なブラックホールは存在しないことになります。ただ、このエコーが存在するかどうかが分かるのは時間の問題です。結果が肯定的であれば、物理学の歴史で偉大な発見の一つとなるでしょう」

 

とてもレアな「中間質量ブラックホール」を発見

 

via: Phys Org/ translated & text by SENPAI

 

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