「意識の起源」に迫る。脳内に埋め込んだ電極から意識的知覚の出現を観測する実験

brain 2018/06/15
Credit: AlicePopkorn on Visualhunt / CC BY-NC-ND
Point
・脳内に電極が埋め込まれたてんかん患者を調査した結果、意識的知覚の出現を観測
・両眼視野闘争により、片方の絵に意識が向けられた瞬間の前後における神経活動がわかる
・意識的知覚を生み出しているのは「中部前頭葉」の特定部位である可能性

脳内における意識の起源に、人類は一歩近づいたようです。

神経科学者がてんかん患者の脳を調べた結果、認知経験とリンクした脳細胞の一連の活動を絞り込むことに成功しました。意識が出現するその瞬間における神経の活動から、正確な位置を特定したのです。

意識がどのようにつくられ、そしてどこに存在しているのかは、科学技術の発展が著しい現代においてもいまだ解明されていません。現在多くの科学者が、この謎を解こうと懸命に研究を続けています。

Human single neuron activity precedes emergence of conscious perception
https://www.nature.com/articles/s41467-018-03749-0

今回の研究の筆頭著者、ハガー・へルバート・サジブ氏は、その研究者の一人。「コンピューターやロボットは意識することなく世界と相互作用します。しかし、私達の脳内では意識が生み出されるという奇跡が起き、主観的な観点から世界を経験しているのです」と説明しています。

この実験は長年に渡って行われており、その多くはfMRI技術や類似の高レベルスキャンが使われています。しかしこの実験では、脳のどの区画が視覚刺激をふだんの「意識体験」へと変化させているのかを特定できる一方、詳しい電気的な神経活動はわかりません。

Credit: Ars Electronica on Visualhunt / CC BY-NC-ND / イメージ図

脳内の電位活動を測定するためには、人の脳に電極を指すという倫理的な問題が生じます。しかし倫理的な問題を発生させずに、研究を行える人々が存在しました。元々、症状を診断するために脳に電極を埋め込んでいるてんかん患者です。

研究者たちは彼らに協力を要請し、結果9名の患者がそれに応じました。実験で利用されたのは、「両眼視野闘争」という現象。これは目の左右で別々の絵を見せられた場合、光刺激は両方受け取っているにもかかわらず、同時に両方の絵を見ることは出来ず、意識に上るのはどちらか一方になるという現象です。この現象を利用することで、刺激の受容と実際に「見える」ことを分けることが出来ます。

参加者はどちらかの絵が見えた瞬間に、研究者に報告しました。その結果、対象者が頭の中で「見えた」と感じる直前の2秒間に、行動の動機づけに関与する前頭葉内側面の特定部位が活性化していることが分かりました。そしてその1秒後には、海馬に到る側頭葉内側面の領域が活性化しました。「2秒というのは神経の活性という点から言うと長い時間です。これらの神経の活性は知覚と関係しているだけでなく、意識的な知覚を生み出す過程に関与しているものと考えられるのです」とへルバート・サジブ氏は述べています。

意識の変化のみを見る方法として両眼視野闘争を使うのは、非常に興味深い方法です。意識の生み出される場所が詳しく特定できたことで、意識の起源の解明に少しずつ近づいているのではないでしょうか。

 

「やる気スイッチ」の脳内メカニズムが明らかに

 

via: Science Alert/ translated & text by SENPAI

 

関連記事

人間の脳、実は量子コンピューターだった? 科学者が本気で実験を開始

死後の世界は「存在する」?量子力学が導くアフター・ライフの存在

身体から離した豚の脳を36時間「生かす」実験が成功する。意識はあるの?

SHARE

TAG

brainの関連記事

RELATED ARTICLE