体を溶かして姿を消すロボットを開発!
体を溶かして姿を消すロボットを開発! / Credit: canva
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任務を終えたら体を溶かして痕跡を消すスパイロボットを開発!

2023.09.01 Friday

敵地に忍び込んで偵察し、任務を終えると自ら溶けて証拠を消す…。

そんなSF的発想のロボットが実現しようとしています。

韓国ソウル大学校(SNU)はこのほど、水たまり以外にはほぼ痕跡を残さずに自己消滅できるソフトロボットの開発に成功したと発表しました。

まだ試作段階にあり実用化は程遠いですが、ロボットのボディ素材を溶かす方法を確立した点で大きな一歩を踏み出しています。

使い途としては偵察ミッションで敵の手に落ちるのを防ぐほか、退避や回収の難しい危険な場所での活用が想定されているという。

研究の詳細は、2023年8月25日付で科学雑誌『Science Advances』に掲載されています。

Soft robots self-destruct with little trace https://techxplore.com/news/2023-08-soft-robots-self-destruct.html
Lifetime-configurable soft robots via photodegradable silicone elastomer composites https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adh9962

ロボットの「自己消滅」はどんなシーンで使える?

従来のハードロボットに比べ、柔軟な素材を使うソフトロボットは、生物のように柔らかい動きを再現できることで大いに注目されています。

その柔軟性や弾性により、狭い空間にするりと入り込んだり、壊れやすい物を優しくつかんだりと、高度で複雑な動きが可能です。

近年、ソフトロボットの機能は急速に進化しており、生物のあらゆる動きを模倣できるまでになりました。

しかし、その中で再現できていなかったのが「死(=消滅)」です。

生物のからだは有機物からなるため、寿命を終えると自然に分解が始まりますが、ソフトロボットは分解されにくい物質を使っているため、自己消滅の再現はどうしても困難でした。

ソフトロボットは生物のような柔軟な動きを実現させているが…
ソフトロボットは生物のような柔軟な動きを実現させているが… / Credit: canva

その一方でロボット工学者たちは、寿命や任務を終えたロボットが自己消滅するというアイデアに強く惹かれています。

例えば、軍事作戦の偵察・監視ミッションにおいて、重要なデータが敵の手に落ちるのを防ぐために、回復不能な形で自己消滅できる機能は大いに役立つはずです。

トム・クルーズ主演の映画『ミッション:インポッシブル』シリーズでは毎回、極秘ミッションを伝えるテープレコーダーが再生された5秒後に自動的に消滅するシーンが必ず出てきますね。

イメージとしては、あれと同じような機能をソフトロボットに持たせるようなものでしょう。

また深海や放射能の汚染エリアなど、ロボットの退避や回収が困難な場所で利用された際も、任務を終えたロボットが廃棄後に分解され自然のサイクルへ還るという死のプロセスをロボットに与えたいという希望が、開発者たちにはあるようです。

しかし、この機能の実現には乗り越えるべき課題が多く、研究チームもその方法の確立に約2年を費やしました。

では、チームは一体どのようにしてソフトロボットを自己消滅させたのでしょうか?

次ページロボットのボディ素材を「溶かす」方法とは?

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