8億年前の単純な生物に「脳細胞」の起源があると判明!
8億年前の単純な生物に「脳細胞」の起源があると判明! / Credit:Sebastián R. Najle/Center for Genomic Regulation
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8億年前の単純な生物に「脳細胞」の起源があると判明!

2023.09.21 Thursday

カンブリア紀やエディアカラ紀よりも遥かに前の時代です。

スペインのゲノム制御センター(CRG)で行われた研究により、ニューロンの起源となる細胞が約8億年前に生きていた単純な多細胞動物「平板動物」に存在していたことが示されました。

平板動物は脳も筋肉も消化器官も持たない「最も単純な動物」であり、形もドロドロとした不定形となっています。

しかし研究者たちが平板動物を構成する細胞を詳しく分析したところ、神経ペプチドを放出して他の細胞の運動を制御している、ニューロンに極めてよく似た細胞が存在することがわかりました。

研究者たちは平板動物で発見されたニューロンそっくりの細胞は、脊椎動物や昆虫、ヒトデやクラゲなどさまざまな種でみられるニューロンの起源であると述べています。

8億年前と言えばカンブリア爆発が起きたカンブリア紀(5億4200万年~4億8830万年前)や、アヴァロン爆発が起きたエディアカラ紀(6億2000万年~5億4200万年前)よりもさらに古い原生代(クライオジェニアン紀)となります。

そんな時代の生物が、なぜニューロンに似た細胞を必要としたのでしょうか?

研究内容の詳細は2023年9月19日に『Cell』にて公開されました。

Tiny sea creatures reveal the ancient origins of neurons https://www.crg.eu/en/news/tiny-sea-creatures-reveal-ancient-origins-neurons
Stepwise emergence of the neuronal gene expression program in early animal evolution https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(23)00917-0?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0092867423009170%3Fshowall%3Dtrue#%20

見た目が完全にアメーバな「動物門の異端児」

有櫛動物の代表はクシクラゲ、海綿動物の代表は海綿、平板動物の代表はセンモウヒラムシ、刺胞動物の代表はヒトデやクラゲ、左右相称動物の代表は人間や昆虫などとなっています。なお左右相称動物とは外見が左右対称になっている動物であり、現在の地球上で圧倒的な勢力を誇っています。左右対称になることで動物は高い移動能力を獲得しました
有櫛動物の代表はクシクラゲ、海綿動物の代表は海綿、平板動物の代表はセンモウヒラムシ、刺胞動物の代表はヒトデやクラゲ、左右相称動物の代表は人間や昆虫などとなっています。なお左右相称動物とは外見が左右対称になっている動物であり、現在の地球上で圧倒的な勢力を誇っています。左右対称になることで動物は高い移動能力を獲得しました / Cresit:Canva . ナゾロジー編集部

現在の分類では、動物は大きく5つのグループ(門)に別けられることが知られています。

上の図からもわかるように、この5つのうち4つは人間、ヒトデ、海面、クシクラゲなど比較的メジャーな種が含まれていいます。

(※クラゲはヒトデと同じグループですが、クシクラゲは独自のグループを作っています)

しかし平板動物と呼ばれるグループは、多くの人にとって聞き覚えがないものでしょう。

平板動物は砂粒ほどの大きさしかない、ドロドロとした不定形の生物であり、主食となる微生物や藻類を丸呑みして体内で消化することで生きています。

画像
Credit:Sebastián R. Najle/Center for Genomic Regulation

平板動物がうまれたのはカンブリア紀やエディアカラ紀よりもさらに過去となる8億年前とされており、誕生以降ほとんど姿形を進化させていないと考えられています。

(※多細胞動物が誕生したのが10億年前と考えられています)

そのため現在において知られているのはわずか数種類であり、5つの動物門の中で最も種類が少なくなっています。

平板動物の体の構造は極めて単純となっており、体の厚さも細胞層が3つあるだけで、名前の通り全体的に平たい形をしています。

移動方法は主に繊毛であり、増殖方法は分裂や出芽となっています。

そのためアメーバの仲間のように思えますが、列記とした「動物」の一種であり、生命の木においても、海綿やクシクラゲのグループよりも、人間のほうに近い存在となっています。

しかし、そんな人間に近いハズの平板動物は、神経や筋肉、消化管といった動物にとって大切なあらゆる器官が存在しません。

先に述べたように、増殖方法も主に分裂や出芽であり、人間に近い部分はほとんどないように思えます。

(※平板動物も一応、卵子を作って有性生殖することも可能ですが、生殖器官はなく、体の細胞の一部が卵子化するだけです)

そこで今回、ゲノム制御センターの研究者たちは平板動物の体を徹底的に調べ、どんな細胞で構成されているかを調べることにしました。

器官レベルでは一致していなくても、細胞レベルでは人間に近い何かが潜んでいる可能性があったからです。

すると平板動物は主に9種類の細胞型が存在し、それぞれの細胞型が状況に応じて他の種類に変身できることが判明しました。

ですが最も興味深かったのは、神経伝達物質(神経ペプチド)を放出している奇妙な細胞「ペプチド作動性細胞」の存在でした。

も神経もないドロドロした細胞の塊にすぎない生物が、なぜ神経ペプチドを作る必要があったのでしょうか?

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