中性子星で起こる「奇妙な物質の状態」が原子周期表を広げる可能性

chemistry 2018/06/22

Point
・原子を構成する陽子や中性子は、素粒子であるアップクォークとダウンクォークの3つ組でできている
・クォークが液状に集団を作った「ストレンジクォークマター」が提唱されているが、ストレンジクォークを含まない「アップダウンクォークマター」のほうがより好ましいかもしれない
・周期表で現在最大の原子量の元素より重い未知の元素は、陽子や中性子がudQMの状態になるかもしれない

今回はちょっと専門的な、クォークについての不思議なお話です。

物理学者たちが、極限状態におけるクォークの配置について疑問を呈しています。彼らは、現在の周期表を超えた元素が、思ったよりもずっと奇妙な性質を持つ可能性を示そうとしているのです。

周期表の深い底には、素粒子の並びが独特な怪物が潜んでいます。それは最も重い元素、原子番号118のオガネッソン(Og)。118個の陽子を含む怪物で、その原子量は約300です。

しかし、これよりもさらに大きな塊として編成された陽子と中性子も、安定することがないとはいえません。しかしまだ誰も、その発見には至っていないのです。

周期表をどれだけ広げることができるのか、科学者たちが推測する一方で、元素が大きくなればなるほど、それらの振る舞いを支配する基本原理は変化します。

そして今回トロント大学の物理学者たちは、陽子や中性子を形成している素粒子は極限状態において通常の結びつきが崩れるかもしれないといわれていますが、それでも原子がとどまるのに十分な安定性を保つことができると指摘しています。

Credit:miraikan / クォークは陽子や中性子を構成する基本的な粒子

この素粒子とは6つのタイプのクォークと呼ばれるもので、アップ、ダウン、チャーム、ストレンジ、トップ、そしてボトムに別れます。陽子は2つのアップクォークと1つのダウンクォーク、中性子は2つのダウンクォークと1つのアップクォークで構成されています。クォークの構成はこの2つに限定されてはいませんが、他の構成だと長く安定することが難しく、ごく稀であることが知られています。

30年前に物理学者のエドワード・ウィッテンが提唱したことによると、クォークを3つ組の状態に適切に保つには、中性子星の中で見られるような強い圧力が必要です。「ストレンジクォークマター(SQM)」はアップ、ダウン、ストレンジが比較的等しく混ざりあったもので、三組ではなく、多量な動き回る素粒子の液体であるとされています。

Credit: jaxa

物理学者のボブ・ホルドンらによると、実際に計算した結果、アップクォークとダウンクォークだけによる「アップダウンクォークマター(udQM)」が可能性としてだけでなく、より好ましい可能性が示されました。

チームは基本へ立ち返り、うごめくクォークの大集団の最も低いエネルギー準位を探りました。そして、udQMの基底状態がSQMや陽子や中性子内の三組状態のエネルギーよりも実際には低いかもしれないことを発見したのです。つまり、もし1団のクォークに十分な圧力が加わると、ストレンジクォークの助けを必要としないエネルギーレベルで、アップクォークとダウンクォークは液状の乱雑な集合体へと変わるというのです。

中性子星はちょうどそれに適した圧力を生み出しますが、力がかかっている限り、原子の中心部は非常に激しい場所です。チームが示唆するところによると、原子量が300を超える原子も、アップクォークとダウンクォークが結びつきを緩めて集合することを促すのに必要な環境を生み出しすとのこと。

udQMを考慮することで、周期表をさらに広げる助けになるかもしれません。また、udQMが見つかるのは遠くから放射された宇宙線によるかもしれませんし、あるいは加速実験によって見つかるかもしれません。もしudQMを発見し、応用することができれば、新たなエネルギー源としてクォークマターリアクターが使えるようになるかもしれません。

 

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via: Science Alert/ translated & text by SENPAI

 

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