宇宙の「欠けていたバリオン」がついに発見される

space 2018/06/27
Credit: Illustris Collaboration
Point
・これまで、目に見える「普通の物質」とされる「バリオン物質」の30%が行方不明であった
・調査した「中高温銀河間物質 (WHIM)」の濃度から、そこに「消えたバリオン」が存在していることがわかった
・「消えたバリオン問題」の解決は、「宇宙の始まり」にもヒントを与えるものである

1960年代、天文学者たちは「一般相対性理論」で導かれる宇宙の質量と、実際の観察によって得られる宇宙の質量が異なっていることに気が付きます。そして、彼らはその事実に基づき、宇宙の質量の大部分は「目に見えない」物質によって構成されているとの仮説を立てました。しかし、その「目に見えない」物質、いわゆる「暗黒物質」を含めたとしてもなお計算は合わず、目に見える物質の約2/3を占めるに過ぎません。

これが「消えたバリオン」問題であり、研究者たちはその存在を探し求めてきました。そして最新の研究により、銀河間の網の目に「高度にイオン化された酸素ガスを含むフィラメント」から成る「バリオン物質」が隠されていることがわかりました。

Observations of the missing baryons in the warm–hot intergalactic medium
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0204-1
Credit: www2.kek / バリオンはuクォーク2つとdクォーク1つから構成されている

バリオンとは、3つのクォークで構成される原子よりも小さい亜原子粒子です。陽子や中性子も、この3つのクォークから構成されるバリオンの一種です。

これまで、「普通の物質」とされる「バリオン物質」は、約10%が銀河に存在する恒星や、恒星の材料となる星間ガスの中に存在し、約60%は銀河間の広大なスペースを埋めるガスの中に存在していると考えられていましたが、残りの30%は説明がつかないままでした。今回の研究は、その「30%」の謎に迫るもので、その30%もまた「銀河の間」に存在しているのかどうかが注目されました。

Credit: astro.isas.jaxa

その基礎理論は、2012年にシャルル・ダンフォース氏が発表した研究にあります。その中でダンフォース氏は、「消えたバリオン物質」が「中高温銀河間物質 (Warm-hot intergalactic medium, WHIM)」の中に存在していることを示唆していました。

その理論をテストするために、研究チームはハッブル宇宙望遠鏡からのデータを用いて、“クエーサー1ES 1553” の近くの “WHIM” を調査。そしてその “WHIM” の密度から、この「高度にイオン化された酸素ガス(WHIM)」の中に「残りの30%」が存在していることがついに結論づけられたのです。

この発見は、「消えたバリオン」のありかを示すだけでなく、「宇宙の始まり」についてのヒントを与えるものでもあります。つまり、初期の宇宙で作られたとされるバリオンについての調査を重ねれば、その研究がビッグバン理論の謎を解くカギとなることも考えられるのです。

研究チームは今後、さらに同じような別の “WHIM” の存在を探し、調査を実施する予定です。

 

暗黒物質がない銀河を発見、逆に暗黒物質の存在を証明へ

 

via: universetoday / translated & text by なかしー

 

関連記事

ふり出しに戻る。 暗黒物質は重力以外の力では相互作用しないと発覚、観測ますます難しく

最も遠い巨大ブラックホールを観測、宇宙の始まりに迫る

SHARE

TAG

spaceの関連記事

RELATED ARTICLE