ドイツの巨大核融合炉がプラズマの新記録を樹立 無限のクリーンエネルギーへ一歩

science_technology 2018/06/29

Point
・クリーンなエネルギーである核融合の実験炉ヴェルデンシュタイン7-Xはステラレータ型である
・ステラレータ型はトカマク型よりもプラズマを制御しやすい
・ヴェルデンシュタイン7-Xによる最新の実験で、スタラレータ型で最高の温度と持続時間を達成

世界一流のプラズマ研究所の一つが、新たな記録を打ち立てました。これは実質的に、無限のクリーンエネルギーを生み出す核融合発電という素晴らしい目標へと一歩近づいたといって良いでしょう。

Magnetic configuration effects on the Wendelstein 7-X stellarator
https://www.nature.com/articles/s41567-018-0141-9

ヴェンデルシュタイン7-Xステラレータは、磁気を使ってプラズマを閉じ込める方式の核融合装置です。実験により、この装置の特殊なデザインが、他の方式に比べてより高いパワーを生み出す秘訣だということが分かったのです。

ヴェルデンシュタイン7-Xが、マックスプランク研究所でプラズマ物理学の実験として最初に点火されたのは2015年。約10分の1秒の間、100万℃に熱せられたヘリウムイオンのループを保持できることが示されました。そう聞くと、エネルギーを生み出そうと思ったときに全然役に立たないように聞こえますが、決してそんなことはありません。この装置は、発電所として可動することを目的として運用されているわけではないのです。

この装置は、核融合技術からできる限り多くを引き出す方法を見つけるための実験場であり、その実験も現状驚くほどうまくいっています。最新のテストでは、以前のテストよりも18倍多くのエネルギーが投入され、プラズマ内を高速で動くヘリウムイオンは4千万℃に達しました。これは以前の4倍の熱です。

通常「原子力」と聞いて馴染み深いのは、電気を生み出すのに大型の原子の崩壊を使用するものでしょう。一方、融合エネルギーは、代わりに2つの原子を融合することでエネルギーを得ます。原子を分解することで生み出される有害なタイプの放射能を産まないので未来のエネルギー源として注目されています。実際、炉の内部に並んだ放射線を受けたパネルを別にすると、核融合は得られるパワーと同じくらいクリーンです。

Credit:Gwurden / ヴェンデルシュタイン7-Xの炉の内部。プラズマと壁との衝突を防ぐアーマーとなる、ステンレスのカバーと、水冷の銅の背板

しかし、原子を融合させるには厳しい条件があります。なんと1億℃近くの温度まで上げなければならず、それには特殊な装置が必要となります。その装置として有望なものの一つが、W7-Xなのです。

核融合炉としては、トカマク型が知られています。これはブラズマによって生み出された電磁場を、電荷を持った粒子がドーナツ状に保持されるのに利用されているものです。この激しく動く熱いプラズマの雲に燃料が注入されると、驚くほどのエネルギーが生み出されます。しかし安定性を欠くために、エネルギーの放出は短時間で終わってしまいます。一方のW7-Xのようなステラレータ型は螺旋状の電磁コイルをプラズマの閉じ込めに利用するため、よりコントロールしやすく、ヘリウムのプラズマのリングをより長期間保持できます

最新の実験では、その封じ込め時間にも飛躍が見られました。以前は6秒が最高だったのに比べ、25秒もの間プラズマを生み出すことができたのです。これは今までのステラレータ型で最長です。まだ、時間単位では大したことはありませんが、目覚ましい改善には変わりありません。

改良をもたらしたのは、炉の内装の新たな被覆材です。プラズマの流れに影響を及ぼす脱線した粒子の進行を変えることで、プラズマの流れを整える助けとなりました。次の実験ではプラズマをより高い密度と温度に押し上げるようなこの被覆材の変化に注目する予定です。

いつ実用化されるのかを予想することは今の段階ではできませんが、実験の成果は着実に良い方向へ向かっているようです。

 

核融合炉内部で「幽霊」のようなホイスラー波が発見される

 

via: Science Alert/ translated & text by SENPAI

 

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