動物の声を理解できる「ドリトル先生」, Dr. Dolittle (1998 film)
動物の声を理解できる「ドリトル先生」, Dr. Dolittle (1998 film) / Credit:20th Century Studios, Movie Trailer World(YouTube)_Doctor Dolittle (1998) – Official Trailer
animals plants

動物の声を理解できるケンブリッジ大学の「リアル・ドリトル先生」

2024.02.09 Friday

「動物の声を理解したい」という私たちの憧れは、ヒュー・ロフティング氏による児童文学「ドリトル先生」シリーズの中で見事に表現されています。

このドリトル先生は、動物の言葉を理解し、会話できる医者なのです。

もちろん、ドリトル先生は架空の人物ですが、現実世界にも「動物の声を理解できる先生」がいるようです。

イギリスのケンブリッジ大学(University of Cambridge)に所属するアニマルコミュニケーションの専門家アリック・カーシェンバウム氏は、人々から「リアル・ドリトル先生」と呼ばれています。

彼は、オオカミから水中のイルカまで、様々な動物の声を聞き、その意味を理解する研究を行っています。

Cambridge scientist dubbed the ‘real life Doctor Dolittle’ claims he can talk to animals – so we put his skills to the test on clips of pigs, cats and dolphins (with incredible results!) https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-13024329/Cambridge-scientist-Doctor-Dolittle-talk-animals.html

動物の声を理解できる「リアル・ドリトル先生」

「リアル・ドリトル先生」と呼ばれるケンブリッジ大学のアリック・カーシェンバウム氏
「リアル・ドリトル先生」と呼ばれるケンブリッジ大学のアリック・カーシェンバウム氏 / Credit:University of Cambridge_Dr Arik Kershenbaum

リアル・ドリトル先生」と呼ばれているカーシェンバウム氏は、『Why Animals Talk(なぜ動物は話すのか)』の著者であり、「科学に頼るなら動物の言っていることが理解できる」と述べています。

では、リアル・ドリトル先生は、いったいどのように動物の声を理解しているのでしょうか。

彼によると、「動物の声の意味を理解するには、ただ聞くだけでは不十分」であり、「動物が何をしているかを理解する」ことが大切なのだとか。

スペクトログラムの例。イルカの鳴き声。
スペクトログラムの例。イルカの鳴き声。 / Credit:Wikipedia Commons_Spectrogram

実際、カーシェンバウム氏は、動物の声を理解するために、まず動物たちが出す音のスペクトログラム(周波数分析のグラフ)を作成します。

次いで特定のパターンに注目し、その音と、その時動物に何が起こっているかを関連付けることで、「声の意味」を把握しているのです。

例えば、次の動画では、イルカ、ブタ、オオカミの鳴き声を聞くことができます。

音声だけを聞いたカーシェンバウム氏は、それぞれの声の意味を説明することができました。

まずイルカ(バンドウイルカ)の声について、カーシェンバウム氏は、同じホイッスルが繰り返されていることに気づきました。

バンドウイルカは、お互いを認識するために、それぞれの生息地やコミュニティの影響を受けた固有のホイッスルを使います。

そのため彼は、この録音について、(不明な部分はあるものの)「1頭のイルカが、別のイルカに挨拶する場面を記録したもの」だと説明しています。

ブタの声にはどんな意味がある?
ブタの声にはどんな意味がある? / Credit:Canva

またブタの声については、そのスペクトログラムから、「周囲の仲間や状況を確認する短距離の通話」であることを特定しました。

しかも彼は、この声に「エサの存在」「ブタの感情」についての追加情報が含まれている可能性があると推測しており、もしかしたら「どけ、腹が減った」などと言っているかもしれないと述べました。

ちなみに、この音声サンプルは、「農場のブタが飼い主からエサを与えられる場面を記録したもの」であり、カーシェンバウム氏の推測は当たっている可能性が高いようです。

リアル・ドリトル先生が特定の「オオカミの遠吠え」の意味を解説
リアル・ドリトル先生が特定の「オオカミの遠吠え」の意味を解説 / Credit:Canva

3つ目の声はオオカミの遠吠えです。

カーシェンバウム氏の分析によると、この遠吠えは「長くて平らであり、あまり変化がない」ものであり、これは「孤独な遠吠え」の典型なのだとか。

そして、オオカミたちが声の高さを上げたり下げたりしているのは、「全員が一緒になって吠えることで興奮している」ことを示すようです。

実は、この推測も当たっており、録音に出てくる「ゼファー」という最初のオオカミは、仲間が数頭しかいない保護区で生活しており、保護センターによると、「彼は孤独を感じていた可能性が高い」というのです。

このように、動物たちの声を理解できるカーシェンバウム氏は、確かに「リアル・ドリトル先生」と言えそうです。

では、私たちにも動物の声を理解することは可能でしょうか?

カーシェンバウム氏は、そのための簡単な方法も伝えています。

次ページ私たちもドリトル先生になれる!?  動物の声を理解するための簡単なポイント

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

動物のニュースanimals plants news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!